第58話 買い物タイム
新しく無双鉄騎団に加入したエミナの為に、ダブルハイランダー用の魔導機を購入することになり、大きな都市へとやってきた。
「これくらい大きな都市ならダブルハイランダーの機体も手に入るだろ」
「どうかね、ハイランダーの機体ならあるだろうけど、ダブルハイランダーとなると一般的な需要がないからね」
「裏の商人なら取り扱ってんだよ、魔導機は金持ちのコレクターもいるからな、乗れる乗れないじゃなく売れるからな」
「なるほどね、確かにうちにも一人、魔導機コレクター候補がいるくらいだからね」
確かにファルマには十分その素質はありそうだ。
何軒かの商人を回って、ようやくダブルハイランダー専用機を扱っている人物にたどり着いた。
「ダブルハイランダー専用魔導機なら取り扱ってるよ、奥にあるから見ていきな」
奥に行くと五体ほどの魔導機が格納されていた。
「その機体と奥のがダブルハイランダー専用機だ、どちらも最高品質の品だから値は張るけどおすすめだぜ」
「よし、エミナ、お前が乗るんだから自分で選べよ」
「えっ、いいのですか?」
「しかし! 値段が高くなればなるほど機体のレンタル代は高くなるから、返済を考えたら安い機体をお勧めするぞ、あれだったらダブルハイランダー専用の機体じゃなくてもいいし、自分で決めな」
「確かにレンタル代が高くなるのは理解します……でも、やはり自分の力を最大限に引き出せる機体を選びたいですね」
あっ……ジャンの奴、エミナにこうやって自分で選択させて、魔導機のレンタル代が高いのを文句言わせないようにする気だな、抜かりない奴だな……
「試乗してもいいですか」
そうエミナが商人に言うと、商人は本気で驚いていた。
「あんた、ダブルハイランダーなのか! まあ、構わないが、あまり激しい動作はしないでくれよ」
エミナはダブルハイランダー専用機の二体を試乗して、細身でひ弱そうな緑の機体を選択した。
「この機体が気に入りました、見た目よりパワーがありますし、機動力が抜群ですね」
「なかなか見る目があるじゃないか、こいつは魔導機アルテミス、起動ルーディア値21000、最大出力200万、装甲Bランク、機動力SSランクの機動力特化型魔導機だ、能力だけでも高性能だが、こいつにはステルス能力が備わっていて、無音、保護色によって敵に見つかりにくいように行動することが可能だ」
「なかなかすげー能力だな、それだと、さぞかし値段の方もすげーんだろうな」
ジャンがわざとらしい感じで商人にそう聞いた。
「いや、確かに性能はいいが、需要はあまりない機体だからな、2億ってとこだな」
「2億ね……その値段じゃ買い手がつかなくて随分長くこの倉庫に置かれてんじゃないか?」
ジャンの指摘は図星だったようで、商人の表情が露骨に変わる。
「い……いや、確かに売れ残りではあるが、性能を見れば掘り出し物なのはわかるだろ?」
「魔導機は保管するだけでもコストがかかるからな……何年も売れ残ってるんじゃ相当な額になってんじゃねえか? そろそろ売らないと採算取れなくなって、叩き売るハメになりそうだよな……」
どうやら商人としての器はジャンの方が上のようで、取引は終始ジャン主導でおこなわれた、結果、2億の値段は半額の1億にまで下がった。
「よし、買った! すぐに持ち帰るから会計してくれ。エミナ、そのまま乗ってライドキャリアまで運んでくれるか」
こうして、ダブルハイランダー専用機を破格の1億で購入することができた。
目的の買い物は終わったが、ライザが魔導機の部品などを購入したいと言い出したので、俺たちは魔導機の市場へとやってきてきた。
「マガナイトを10ブロックとテクタイトを15ブロック、あとはナノチューブとエレメンタルロープを3ダース」
「へい、毎度、全部で3200万ゴルドになります」
店主がそう言うと、注文したライザが後ろにいるジャンに涼しい顔でこう言った。
「ジャン、払って」
「おいおい、ライザ、そんなに必要なのか?」
「必要だから買ったの、早く払いなさいよ」
「たく……ほら、3200万だ」
値切りもしないで簡単に支払ったジャンが不思議に思ったので聞いてみると……
「素材なんかは相場が決まってるからな、値切るもんじゃねえよ」
なるほど、そういうもんなんだ……
「あれって最新のボウガンランチャーじゃない」
とある武器屋の前で、エミナが興奮したようにライザにそう話しかけた。
「そうね、確か高威力で連射できる自動装填式らしいけど、あの大きさでアロー並の威力があるらしいわね」
「欲しい! 私のアルテミスにあれを装備して」
「私はいいけど、ジャン、どうする、5000万くらいするわよあれ」
「武器に5000万だと! チッ……いいだろ、だけどレンタル代が高くなるからな、覚悟しろよ」
いや、これはエミナを借金漬けにしたいジャンに取っては好都合だろ……嫌々了承した感じだが、笑みが見え隠れしている。これはいよいよエミナは国に帰れなくなるぞ……
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