第36話 想定以上

「どうも変だね……敵の数が多すぎる……」


アリュナが近くにいる最後の敵機の首を飛ばした後にそう言う……


「確かにそうだな……俺たちだけでもう随分倒したと思うけど……


「もしかしたら敵の魔導機100ってのは大きく間違った数字かもしれないね……ほら、それを証明するように東と南の友軍はかなり苦戦してるようだわ」


アリュナがそう言うので、ビーコン水晶を広く表示して確認した……すると味方を識別する点が、凄い勢いで消えていっていた……


「勇太、こちらを早く片付けよう……このままだと私たち以外は全滅しそうだ……」


「あれ、手助けしないんじゃ無かったっけ」

「そうしたいけどね、まあ、無双鉄騎団の最初の作戦が失敗ってのも格好悪いでしょう」


「確かにそうだな、じゃあ、さっさとやってしまうか」


西側の敵は、要塞近くにいる魔導機と、要塞に設置されているバリスタを残すのみになっていた……


「要塞のバリスタが厄介そうだな……ファルマ、上昇して狙えないか」

「うん、やってみる……」


ファルマのガルーダはグングンと上昇していき要塞の城壁より高く上がった……要塞を設計した人間も、まさか城壁が上から攻撃されるとは想定していなかっただろう……設置されているバリスタはファルマの位置からは丸見えのようだ。


ファルマはゆっくり弓を弾き、そしてバリスタの一機に向かって放った……アローは直線的な放物線を描き、狙ったバリスタを木っ端微塵に破壊した。


「凄いぞファルマ、一発で仕留めたな」


俺に褒められて気を良くしたのか、ファルマはその調子で次々にバリスタを射抜いていった。要塞のバリスタも反撃を試みるが、射程外のようでアローは虚しく俺たちの手前に落下する。


あっ、そうだ、俺も飛び道具持ってたんだった……ちょっと試しに撃ってみるかな……そう考えて、魔光弾を構えて、バリスタの一機に狙いを定めて撃ち抜くイメージを操作球に送る……射程距離もわからないし、とても当たるとは考えていなかったが……


ジュキューーン!!


想像以上の音と強烈な光が魔光弾の先端から放たれる……それは大きな光の帯となって、レーザービームのように真っ直ぐな光の線となり、狙ったバリスタまで伸びる……ドガーン! と凄まじい爆発音が響いてバリスタは粉々に粉砕した……


「勇太! なに、今の!」


驚いたアリュナが驚きの声をあげる。


「いや……魔光弾を試し撃ちしたんだけど……」

「嘘でしょ……あんな威力の魔光弾なんて見たことも聞いたこともないわよ……」


そんな話をしていると、今の一撃で驚いたのか怒ったのか、要塞近くにいた敵の魔導機がこちらに向かってきた……まあ、ファルマのアローで、ぽんぽんとバリスタを破壊されているのもあって放って置けなくなったのだろう。


「勇太! アリュナ! 敵きたよ!」


ナナミがそう警告する。


「よし、もう一発……」


俺は接近してくる敵に向かって魔光弾を撃とうとした……しかし、さっきのように光の弾は出ない。


「あれ、出ないぞ……」

「あれだけの攻撃エネルギーだから……もしかしたらルーディアコアがバーストしてるのかも……」

「バースト?」

「一時的に出力を制御した状態になってるのよ、少ししたら回復すると思うけど……」


「なるほどな、そうなると魔光弾の連射はできないってことだな……」


「もう……敵が来てるって」


あっそうだった……ナナミに再度そう声をかけられ、近づいてきている敵に向き直す……


アリュナが右から接近してきた敵二体と双剣で切り刻む……俺と話をしていても意識は敵をちゃんと見ていたようだ……ナナミも剣で攻撃してきた敵の攻撃を盾で防ぎ、その敵を剣で串刺しにする……俺は近づいた敵の頭をトンファーで吹き飛ばすと、跳躍して敵の一団の真ん中に着地した……驚いた敵は俺を見て固まる……そんな隙だらけの敵の一団に、回転しながらトンファーを振り回して、次々と破壊していった……


「全部片付いたかな」

「そうね、もう近くには敵の魔導機はいない見たい」


その間に、城のバリスタもファルマが全て破壊したようで、要塞の西側は完全に沈黙した。

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