第29話 値切りの先に
ジャンはやはり凄い……結局、四億の値段が二億五千万まで下がった……
「なかなかやりますな……どうですかね……私のところで働きませんか」
大商人はジャンにそう提案した……だけど、彼は笑ってそれを断っていた。
「どうして、断ったんだ、俺と一緒にいるよりも才能を発揮できそうだけど……」
「何言ってんだ、そんなの決まってるだろ」
「どう決まってるんだ?」
「お前といる方が儲かりそうなんだよ」
そう言いながら肩をポンと叩かれた……俺と一緒だと儲かりそう……その真意はいまいちわからなかったけど、どうやら何かしらの計算が働いてるようだ。
「ハーフレーダー用の機体だけど、これなんかどうだい、特殊な機体だけど、使いこなせばかなり強いよ」
そう言って紹介してくれたのは小型の青い機体だった……
「特殊な……それはどのような……」
「魔導機ガルーダ 起動ルーディア値6200、最大出力10万、装甲Cランク、機動力Aランク……ハーフレーダー専用機としても優秀な機体ですが、一番の売りは空を飛べることなんですよ」
「飛べるのかこいつ!」
飛行できる魔導機は珍しいようで、アリュナもジャンも驚いてる。
「飛べるって言ってもフワフワ浮く程度なんですけどね、武器をアローとかにすれば、空から一方的に攻撃できたりして強力なんです」
アローって多分、弓矢だよな……確かにそれは強そうだ……
「それで……いくらなんだ……」
「ふぅ……またあなたと遣り合うのは勘弁して欲しいですね……ですので底値を言いますので、それで納得いかなければ諦めてください」
商人の提示した金額は一億であった……ナナミの機体が安く買えたので問題ない金額だ……後はファルマがどう思うかだけど……
「……空を飛べるなんて凄いです……私……この子に乗りたい……」
どうやらファルマは気に入ってくれたようだ……しかし……ジャンは値切りを諦めたわけではないようで……
「旦那……確かに俺もあんたと遣り合うのはもう勘弁して欲しいので金額は1億でいいんだが……オマケを付けてくれねえか?」
「オマケですか……」
「そうよな、例えばさっきあんたが言ったようにこいつにはアローが似合うんだよな……」
「なるほど……わかりました、それでは最新のアローを付けましょう」
どちらも疲れてるのか、さっきと違って商談は早急にまとまった……
「どうだ二人とも、乗り心地は〜」
購入した魔導機に乗り込んだナナミとファルマにそう声をかける……二機とも初めての操縦にどこかぎこちないけど、なんとか動いてはいた。
「うわ……勇太! ナナミ……魔導機に乗ってるよ……動いてる……」
「よし、ナナミ、ゆっくり動かせよ、あまり無理するな〜」
「二人ともセンスがいいね……最初は歩くのも難しいはずなんだけどね」
そうなんだ……俺は最初からいきなり戦闘だったからな……無我夢中で動かしたからうまく動かせていたのかもよく覚えてない。
「これ……空ってどうやって飛ぶの?」
「いや、待てファルマ、操作に慣れる前からそんな危ないことしちゃダメだ……てっ! 浮き始めたぞ!」
見るとファルマのガルーダ……背中のファン見たいなのがブンブン回り始めて、ゆっくりと浮遊し始めた……
「きゃっ! どうしよう……勇太! 浮いちゃってる!」
「ファルマ! とりあえず下へ降りるようにイメージしろ! まだ飛んじゃダメだ!」
俺の言葉を聞いてか、ガルーダはゆっくりと下へおりてきた……
「ちょっと戦闘に出す前に特訓だね……」
アリュナが二人の動きを見てボソっと呟くようにそう言った……
購入して持ち帰る為に、アリュナのライドキャリアでここまでやってきていたので、そこにヴァジュラとガルーダの二機を積み込む……ちなみにアリュナのライドキャリアは大型で、六機まで魔導機を搭載可能であった……なので俺のアルレオとアリュナのベルシーアもすでに積み込み済みである。
さらにこのライドキャリアは11LLDKの居住スペースと風呂もあり、ここを生活拠点にしても問題なさそうであった。
「それにしてもジャンってルーディア値、意外に高かったんだな」
「高いってたって1500だ、お前たちと比べたら無い見たいなもんだろ」
実は今このライドキャリアを操縦してるのはジャンだった……ライドキャリアの起動ルーディア値は1000だったので彼が操縦を買って出てくれた。
「早速だが、明日物資を積み込んだらカークスに向かうぞ」
ライドキャリアを片手間で操縦しながらジャンがいきなり話を振ってきた。
「なんだよ、ジャン、そのカークスって……」
「カークス共和国……今、チラキア帝国と絶賛戦争中の国だよ
……傭兵団として最初に売り込むにはうってつけの相手だね」
アリュナがジャンの代わりにそう答えてくれた。
「そうだ、カークスはティアタイト鉱山をいくつか持っていて、金を持ってるからな、しかも今はチラキアにかなり押されて劣勢らしい」
うむ……確かに優勢の方に売り込んでも高くは買ってくれないだろうけど……
負けてる相手に味方するのって危なく無いかな……俺はそう危惧していた……
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