第38話接点
早速気温を調べ始めると、確かに足立伸子が殺された日の気温が低い。
五度と記録に残るが、これは測定地にも関係しているが十月の最低だった。
美優は足立伸子の遺体に細工がされて、殺害日時が変わったのかと調べていたのだ。
その時大貫が電話で「冷凍庫で冷やして、殺害日時を変えたと考えているなら、それは無いぞ!人間が簡単に凍る事は無いし、時間が掛かるから無理だ!」と念を押す様に言った。
「態々ありがとうございます」と言う他ない美優は苦笑いをしていた。
確かに死亡推定時間を変えるには、相当短時間の間に遺体の腐敗を防ぐ必要が有るが、中々難しいとの結論が出る美優。
では誰が桂木常務を殺害して、足立伸子を殺害したのか?
美優の推理が再び暗礁に乗り上げた。
翌日意外と早く白骨化の男性の身元が判明して、歯の治療と家族から捜索願いが出ていた事が身元確認の決め手に成った。
「仏さんは池袋で婦人科医院をしていた釜江医師と判明した!女性は未だの身元不明だが知り合いの可能性が高い」
横溝捜査一課長が発表した。
「また産婦人科医が殺害されたのですが、前回の殺し方と異なりますが、関係は有りますか?」記者の質問。
「それはこれから調べますが、私達静岡県警では関連が有ると考えています」
「二課の方で事件に成っている熱海、初島カジノ構想にも関係している訳ですね」記者の質問が飛ぶ。
「勿論です!東南物産の画策で既に錦織議員、猿橋議員、柏崎議員の取り調べが行われていますが、殺人も視野に事実関係を調べています」
「身元不明の女性も釜谷医師と近い人と考えて捜索中ですか?」
「はい、今関係者で行方不明の人物がその女性では?と確認中です」
「それは何方ですか?」
「まだ発表は出来ません!もう少しお待ち下さい」と会見を打ち切った横溝捜査一課長。
半年前に医師の失踪で閉院に成っている釜江婦人科病院。
同じ様にヤマトレディースクリニックも、殆ど同じ時期に院長の死亡で閉院に成っている。
釜江婦人科病院に勤めて居た看護師を捜して聞き込みに行くと、少し前に医院を退職した看護師が居て、今回のもう一人の死体に体型が似ている事を掴んでいた。
名前は瀬戸頼子で、退職後は行方不明に成っている。
家賃は自動引き落としに成っているが、マンションに住んでいる気配が無い事も県警は掴んだ。
マンションの強制捜査で室内から毛髪を採取、DNAの鑑定の結果で予想した通り瀬戸頼子と断定されたのは翌日だった。
美優の進言で釜江病院に残された医療の記録を調べる為に、静岡県警からも数人の刑事が閉院されている病院を訪れた。
院長の行方不明で、病院は当時の状態で保存されて、勤めていた看護師と事務員は自然解散の様に去って行った。
堂本聡子の治療記録が残っていたら、この釜江婦人科で接点が見つかる事に成るからだ。
しかし堂本聡子の治療記録は何処にも存在が無かったが、不透明な治療記録が存在していた。
元この病院に勤めて居た看護師、医療事務員の名簿を入手して、聞き取り調査を行う事にする静岡県警。
一平が「必ず何処かに接点が有る!」と主張した事が大きい。
翌日、籠谷次長と堂本聡子の写真を手に、各地に分散して仕事をしている元の人達だが、比較的早く見つかった事務員二人は全く二人を覚えていない。
瀬戸頼子看護師が、院長とペアで手術を殆ど行い、時々事務所を経由しない患者も居た様な事も有ったと証言した。
院長と瀬戸が同じ葛城山で殺された事に驚いていたが、突然院長が失踪したのは十月二十五日だったと証言して、その二日前に退職していた瀬戸さんから院長に電話が有り、深刻そうな顔をしていた事実を聞き込んだ。
この話から県警では、瀬戸頼子が釜江院長を呼び出した事は間違い無い。
十月二十五日は奇しくも堂本聡子が休暇を取った日だ。
情報を貰った美優は新しい時系列で事件を追ってみる。
十月二十五日から堂本聡子は休んでいる。
① 十月二十五日から堂本聡子は休暇を取り、同日釜江院長は失踪した。
② 十月二十八日に桂木常務は亡く成った
③ 十月三十日に堂本聡子は死んでいたが前日には死んでいた。
④ 十月三十日の早朝足立伸子は死んでいた。
⑤ 堂本聡子の桂木常務殺しは可能だ。
⑥ 籠谷次長は十月二十日には亡く成っている。
⑦ 釜江院長と瀬戸頼子も青酸カリで殺されていた。
⑧ ヤマトと釜江両婦人科では、現状では接点が無い。
静岡県警は釜江医院の資料を持ち帰って分析を始めた。
先だってヤマトレディースクリニックの医療記録も手に入れて、分析を既に始めていた。
ホテルでの睡眠薬自殺だが、使われた薬が違法睡眠薬なので、必ず事件に結び付くと信じていた。
数日後、一平が美優に「ヤマトの方は相当違法な堕胎を行っていた事が判明したが、釜江の方はそれ程違法な事は少ない様だが、患者の名前の無い手術も年に数回有る様だ」
「去年の資料だけ見せて欲しいな!」
「それは無理だよ!自宅に持ち帰りは無理だし、カルテはドイツ語に成っている部分が多いから判らないだろう?今専門の医者に来て貰ってカルテの分析を始めたよ」
「無理か!見に行くかな?」好奇心旺盛な美優は、この釜江の診療記録に何か秘密が隠されているのでは?と思っていた。
「それからお願いされていた植野って人、二年前の三月に出国した男で三人居たよ!これがメモだ」
メモを見て「北海道の男性二十九歳、兵庫県の男性三十歳、山梨県の男性二十八歳この人達独身?」
「それは調べてない、出国した人で調べただけだ」
美優は直ぐに、独身の人か調べて欲しいとお強請りをした。
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