第36話更なる事件
昭子が美優を受け入れたのには理由が有った。
世間では桂木常務と不倫関係に成り、後追い自殺をした事に成っていたので、納得していない昭子は半年が経過して訪れた美優に頼ろうとした。
「大きな会社に就職が決まって、大喜びをしていたのが入社後直ぐに落ち込んでしまって、暗い表情に変わってしまいました。主人も急に出世して、聡子の兄も早い出世で家族は大喜びに成っていたのに、聡子だけ急に暗く成ったのを今でも覚えて居ます」
美優は事情を知っているが、この母親は何も知らないのだろう?子供が風俗で働いて家計を助けていたとは思いもしていないだろう?その風俗で知り合った相手が東南物産の桂木常務だったとは聡子も自宅では、喋っていなかっただろうと思った。
「主人が大腸癌で入院して、退院すると会社に気を使って頂いて、楽な職場に配置転換に成っただけでも喜んでいたのに、管理職に成ったのには驚きと喜びで家族中が大騒ぎに成った位でした」
「それは聡子さんの就職が決まった前後ですか?」
「いいえ、楽な職場に変わった時は就職活動中だったと思いますね、願書は出していたかも知れませんし、会社訪問は積極的に行っていました。それが何か?」
「いえ、会社訪問で既に常務さんに面識が。。。」言葉を濁した美優。
「聡子が一番上機嫌だったのは、入社式の夜でしたね!もう夜中まで自慢話が満開の桜の様でした!それが二日目主人が管理職に昇進して上機嫌だったのに、聡子はこの日から暗い日々に変わり、秘書ですから出張も多く成って、帰らない日が月に五日程は有りましたね」
美優はここまでの話を聞いて、桂木常務が自分の力を使って家族の職場をコントロールしていた事実を掴んだ。
「自宅で仕事の話はされていましたか?」
「全くしませんでしたが、今夜は何処に泊まるとかは、連絡してきましたね!静岡、神奈川が多かったですね」
「聡子さんには恋人とかは?」
「それが、去年の今頃、結婚したいと話していた男性が居たのですよ!子供は三十歳迄に二人産むとか話していたのですが、その後は彼氏の話が消えてしまいました」
「お母さんはその彼氏の事は詳しく聞かれていますか?」
「名前は植野さんです。確か就職する前から付き合っていた様ですが、聡子が就職する前に中国に転勤に成ったと聞きました。その後は年に一度か二度帰った時に会っていた様ですが、去年の今頃から以降は話をしなく成りましたね」
「その植野さん以外でお付き合いの有った方は?」
「大学に入学した時、一人暮らしがしたいと武蔵小杉に小さなマンションを借りて住んでいた時、大村さんと云う同じ大学の人とお付き合いをしていましたが、主人の病気でそのマンションも引き払って、立ち消えに成った様に話していました。主人が入院の時は夜遅くまでバイトをして家計を助けてくれた良い子だったのですよ!」そう言うと感極まり涙が溢れて、席を立ってしまった昭子。
風俗で働いて助けていたのですよ!とは今は口が裂けても言えない美優。
植野と云う男性と去年の今頃は結婚から、子供の事まで考えていた事実は?
子供が宿って居たのでは?でも焼津の看護師の証言では、聡子の存在は確認されていない。
その様な事を考えていると、昭子がコーヒーを入れて戻って来て「名探偵と云われている野平さん、娘が本当に桂木常務の後追い自殺では無い事を証明して下さい。お願いします」
「今先程聞きました聡子さんの彼氏、植野さんの写真とか住所の判る物は御座いませんか?」
「それが、聡子が亡くなる前に総て処分してしまったのか、携帯も写真も何も残って無いのです、自殺の前に身綺麗にしたのだと思います」
「お母さんが他に何か植野さんに付いて、覚えていらっしゃる事は有りませんか?名前とか?」
「名前ですか?。。。。。。」思い出そうとして要るが浮かばない昭子。
その後はコーヒーを飲みながら、聡子の幼少期の話に成ってしまい事件に関する話は皆無だった。
美優は何か思い出だされるか、資料が見つかれば連絡を下さいと言って聡子の実家を後にした。
しかし、植野と云う男性で中国に二年前転勤に成っただけで、人物を特定出来るだろうか?その男性が事件に関係しているとは決まっていない。
だが美優には、子供の話が残って何か関連が有る様な気がしていた。
自宅に帰った美優に新しいニュースが飛込んで来た。
伊豆葛城山の山中で、中年の女性の死体が発見され、死後数ヶ月経過しているとテレビが報道していた。
一平ちゃん、また新しい事件なの?まだ前の事件終わってないのに、と思っているとテレビのアナウンサーが「死因は青酸性の毒物による他殺の疑いが濃厚だと、静岡県警の発表です」と伝えた。
「えー、青酸性の毒物?数ヶ月前?」呟く美優。
その時、久美が美加を連れてやって来て「また事件よ!そのうち自宅に帰らなく成るわね」そう言って微笑んだ。
「美加!寝ちゃったのね」美加の寝顔を見ながら言うと「何か判った?」久美が気に成っているので早速尋ねた。
美優は粗方説明をして「葛城山の遺体も関係有るかも?」と言う。
「身元不明で一部白骨化で、数ヶ月前、青酸性の毒物!可能性有りますね」
「歯形、DNAで身元が判明すれば良いのだけれどね」
二人の予想通り、伊藤も一平もその日は帰宅しなかった。
翌日県警が騒がしく成った。
「青酸性の毒物は、桂木常務、足立伸子の殺害と一致した」と発表されたからだ。
同時に横溝捜査一課長が、葛城山を一斉に捜索する山狩りを行うと発表した。
遺留品の捜索が目的で、何か痕跡を捜す為だった。
夕方一平が疲れた様子で戻り、着替えと風呂に入ると直ぐに出掛けると言った。
「一平ちゃん、忙しいけれど捜して欲しい人が居るのよ!」
「今、とても手が回らないよ!メモ書いてポケットに入れといて、時間が出来たら捜すよ」
「お願いね、植野って人なのよ!堂本聡子さんの恋人だった人!中国に転勤しているらしいわ」風呂の前で喋る美優。
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