みんなでバカンス! 1
「きれ~い!」
カーナが大きく手を広げ目の前に広がる青い空と海に感激している。
でも、これは確かに綺麗だ。
気温も結構暑くなってきているせいか、海も青というより鮮やかなグリーン色に輝いているし、空に浮かぶ雲も大きく盛り上がって、夏という雰囲気が余計に景色を綺麗に見せているのかもしれないな。
「どうです? 良いところでしょ?」
シアが、僕の顔を覗くようにして聞いてきた。
「うん、とっても綺麗な場所だ。それに眼下に見えるのは砂浜だね? 結構人がいるなぁ。やっぱり海水浴なのかな?」
そう言えば、僕がこの世界に来てから海水浴なんてしたこと無かったな?
「そうですね。このランタンは、フォレスタール王国の一番南に位置している、街で夏の保養地になっていますから、結構、海水浴目当てで、商人や貴族の方々が多く訪れる場所ですね」
「やっぱり貴族とか金持ちばかりなんだ?」
「いえ、地元の住民に方は海水浴は、遊びの延長としてよく泳がれているようです」
シアが、少し下に見える海岸で遊ぶ人達を見ながら教えてくれる。
うん、さすがシアが王族であるフォレスタール王国だ。
普通に暮らす人達も少しは遊ぶ事が出来る時間があるのは良い事だ。
それが出来る国はそう多くないと思う。
「でも、いいのですか? レン様。急いでリヒテルに向かわれなくても?」
すこし心配顔のリーシェン。
「うん、このところ次から次へと色々あって真面に休む事も出来なかったからね。どうせリヒテルに向かう道中で立ち寄る場所だし、せっかくの保養観光地だもの。数日みんなで遊んでも罰はあたらないよ」
僕がそう言って大丈夫だよ、と言っても真面目なリーシェンはそれでも少し吹っ切れない表情をしていた。
真面目なのはリーシェンの美徳だけど、たまには羽根をのばさなきゃ。
「リーシェン先輩! せっかくレン様が言っているんだよ? ここは楽しまなきゃ! ね?」
「でも、ですね・・」
カーナに言われてもまだ、歯切れが悪いね。リーシェンにはもうちょっと息抜きを覚えてもらわないといけないな。
「でも、カーナほど息抜きし過ぎるのもどうかとは思うけどね」
「ああ! レン様、今、何気に私の事、お馬鹿にしませんでした?」
「違うよ、カーナの片意地はらない、柔らかい考え方がカーナの良いところどと思うし僕は好きなんだけど、もう少し自重しないと危ない! と思う時もあるから」
僕はカーナに今思っている事をちゃんと伝えた。
「あれ? カーナ。顔が真っ赤だよ?」
何故かカーナが顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「レン様、たぶん自然とそういう言葉が出るのでしょうけど、言われた女の子は大変なんですからね? それとこういう言葉は私達、お嫁さん達以外には言わないように。でないと、め! ですからね?」
僕に人差し指を立てながら、すこし怒った様に注意してくるシア。
でも何で怒っているんだろ?
「主様、鈍感」
アクアまでもが、注意してきた。
なんだか、よく分からないけどここは謝っといた方がいいのかな?
「よく分からないけど、注意するよ」
「はい、お願いしますね。それとリーシェンは、別に嬉しくないわけじゃないですから心配しなくても大丈夫ですよ?」
シアが、そう言ってくるけど、すこし困惑気味の顔がどうにも気になる。
「主様、リーシェン、恥ずかしい。ここに来る途中みんなで買った水着のことが心配」
「ア! アクア様! それは!」
「先輩、レン様が喜んくれそうなのを必死に考えていましたからね♪」
「カーナ!」
あはは、いつもの冷静なリーシェンが、物凄く慌てている。
それはそれで見ていて楽しいけど、ここは助けてあげないとな。
「僕、リーシェンの水着姿、とっても楽しみだよ! 早く見てみたいなぁ」
「え? は、あ! そんな、でも!」
あれ? 余計に慌てだしたぞ? 顔どころか体中真っ赤になってしまっている。
「レン様、わざとですか?」
「そんなこと・・・」
シアがジト目で僕の事を睨んでくる。
何かいけなかったんだろうか?
「主様」
「ん? なあにアクア?」
「主様、リーシェンの水着、早く見てみたい?」
「え? うん、そりゃあ見てみたいけど?」
「リーシェンも変に悩まずに見せてしまえば良い」
「え? アクア様?」
「えい!」
いきなりアクアがリーシェンに向かって両手を振り上げた。
「え?!」
するとリーシェンの足元に魔法陣が出現、そこから突然、大量の水が立ち上る。
一瞬でその水に飲み込まれたリーシェン。
「アクア! 何? どうしたの!?」
僕が叫ぶと、いつも無表情のアクアが笑ったように見え、今度は両手を思いっきり振り下ろした。
今度は、その動作に会わせて大量の水が魔方陣の中へと吸い込まれるように消えていった。
「い、一体何を・・・・あ!?」
「主様、ちゃんとみて感想を言う」
魔法陣が消えたその場所に、リーシェンがずぶ濡れで立ち尽くしていた。
し、しかも、先程まで着ていた服や防具が見当たらず、黒の布面積がやたらと小さいビキニ姿になったリーシェンが呆然と立っている。
「え? は? え、えええええええ! こ、これは! アクア様!!」
絶叫して胸を押さえながらその場にしゃがみ込むリーシェン。
それが返って大きな胸を強調し、小さな布からはみ出しそうになってしまっていた。
「主様、感想」
「か、感想って・・・でも・・リーシェン、すごく綺麗」
長い黒髪が水で濡れ、恥ずかしそうに僕を見つめるリーシェンがやたらと美しく見えた。
「ああ!! リーシェン先輩ばかりずるい! 私も見て下さい!」
カーナが叫びながら僕の前で、服を脱ぎ始め出した。
「ま、待て! カーナ! ここまだ浜辺じゃないし、人の通りだって!」
この後、海水浴場を巡回していた警備隊の人に、みんなでこっぴどく怒られてしまいました。
シア、まだ脱がないでね。
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