第19話 騎士の祭りと白百合の騎士
そろそろ騎士の祭りの時期だ。もう秋学期も残り僅か、リリアちゃんが入学してから、3ヶ月近くがたった。そして、僕達2年生で、この時期話題に上がってくるのが、実務実習だ。
実務実習。文字通り、騎士としての仕事を経験して、将来に役立てようと言うことなのだ。学校にきた依頼をチーム毎にわけ、それをこなしていく。学年から、騎士2人と魔術師1人、そして、先生がついて4人でいろいろな任務を行っていくそうだ。
「そろそろ、チーム分け発表か、どうなるんだろう?」
「先輩に聞いた話だと、だいたい騎士能力に準じてチーム分けするらしいよ」
「そうなんだ。とすると」
「僕とマックス君は、たぶん上位と組むし」
「と言うことは、ランドールか、ロゼリアさんか、後誰だっけ? 暴獣?」
「アハハ、そうだ、暴獣って、誰だっけ? まあ、いいや。誰と組んでも大変そうだね」
「ドラグ他人事だと思って」
「まあね。でも、僕達も、似たり寄ったりだろ。トップクラスと組むのは、しょうがない」
テストも終わり、騎士の祭りの準備を始める。今日は、焼きそばの焼き練習だ。
「まずは、少し油をひいて、豚肉の薄切りを焼くだろ、そして、塩コショウで、味を整えて、鉄板の端に置く。そしたら、油をひいて、キャベツを適量取って同じく、塩コショウで、味を整えながら焼く。キャベツがしんなりしたら、肉を戻して、ソースを入れて炒める。また、鉄板の端に置いて、今度は、少し油をひいて麺を焼く、少し火が入ったら、水をかけて少し蒸し焼きにする。頃合いを見て、キャベツ、肉を合わせて、ソースを混ぜてさらに炒めれば完成だ。トッピングで、青のりと、マヨネーズと、紅ショウガを置いておいて、適当に使ってもらえるようにしておく。以上だ。さあ、食べてみてくれ」
と言って、相変わらず鮮やかにアドルフ先輩が焼き上げる。そして、相変わらず美味しい! 今回は、僕達はトーナメント無いから、中心になって焼かないといけない。さて、焼き練頑張るぞ。
今回は、2年3人共に合格を貰った。そして、1年では、クリスがとても上手だった。他は、今のところう~んという感じだった。
そして、祭りが始まり、ソースの焼ける香りが漂うと、人が集まってくる。
「わたし、3つね」
「俺のまだか、2個頼んだんだけど」
「僕もちょうだい。はい、お金」
今年も大盛況だ。僕達は、ローテーションで、焼いたり、売り子したりしながら、手が空くと他の店を見に行った。
「マックス、疲れたろ? 焼き手交代な。休んで良いぞ」
「ありがとうございます。タキリス先輩、ありがとうございます。じゃ、ちょっと他のお店見てきます」
「えっ、あっ」
リリアちゃんは、ハルリリーちゃん、イシュケルと売り子をしている。今年は、人数多いから、ローテーションも余裕だ。焼き手は、大変だけど。
「そうだ! リリアちゃんも、休んで良いぞ。そろそろ、ローランとハシュタルも帰ってくるし」
「えっ、あっ、でも」
「良いから、休憩!」
「はい、ありがとうございます! タキリス先輩。」
リリアちゃんが後ろから凄い勢いで追いかけてきた。
「マックス先輩、わたしもお休みもらいました。御一緒して良いですか?」
「うん、じゃあ、一緒に行こう。えーと、まずは、ドラグと、ミントちゃんの所行くか」
「はい!」
僕達は、屋台をいろいろ歩き回った。弓道部の射的では、ドラグとミントちゃんが店番していて、射的をやらせてもらう。僕は相変わらず当たらず、リリアちゃんは、2個も商品をゲットする。そして、2人と別れ、広場へ。
広場では多くの人が集まっている。そして、
「いけ~。そこだ。いけっ」
リリアちゃんが叫ぶ。意外だ。格闘技好きなようだ。しばらく、ジョイ達のバトルを楽しむ。そして、リリアちゃんの友達の屋台に寄りつつ、今度は街の入り口に向かう。
そして、古本市場で、本を探す。あった、続聖都物語。ピノとは軽く挨拶して別れる。最後に剣王流の屋台に向かう途中、前方から、大量の焼き鳥を抱えた、ローズ先輩と出会う。周辺にたれの香ばしい香りが漂う。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「おっ、リリア焼き鳥食べない? マックスも、食べて、食べて」
「はい、頂きます」
僕達は、手近なベンチに腰をおろし、焼き鳥を食べる。
「いや、頑張っている。後輩の為に売り上げに貢献しようと思ったら、買いすぎちゃってさ。どうしようかって思ってたんだ」
「凄まじい量だけど、大丈夫?」
「うん、同僚の先生にも配るし、大丈夫だよ」
しばらく、焼き鳥を食べていると、ローズ先輩が、
「こうして、レイリンの祭り見ていると、ホウリンの祭り思い出すな。この間、弟から手紙が来て、ほら、私達、追放されて、国に戻れないから、たまに手紙くれるんだよ。そしたら、平和そうでね。帝国の直轄地になって、国がなくなったはずなのに、祭りも、みんなも変わらない。良いのだろうか?」
「なんだったら、追放解除しましょうか?」
「いいの? と言うか、マックスの一存で解除出来るのか?」
「はい、僕に任されたことですし」
リリアちゃんも、焼き鳥を食べながら、僕の顔をじっと見て、話を聞いている。
「いや、駄目だ。理由もなく解除したら、それこそ、おかしいよ。それに、帝国の支配体制おかしくないか?」
「おかしいですよ。僕は、帝国の体制をきちっと皇帝主体に戻していこうと思っているんですけどね。今は、大公権力に甘えていますけど」
「そっか、お互い頑張ろうな。私は、いつか、トゥルク神聖国を元に戻す。マックスは、帝国を正しい形に戻す。よし、すっきりした」
と言って、立ち上がって去っていった。
「マックス先輩、ありがとうございます」
「何が?」
「姉のことです。たまに何ですけど、悩んでいるみたいで、でも、すっきりしたみたいです。ありがとうございました」
「あ、いえ、どういたしまして」
そして、騎士の祭り最終日。いよいよ、新入生による、トーナメント大会が開催された。今回は、リリアちゃんと言う期待の新人がいて、クリスも、そこそこやれそうだ。
男子21名、女子11名のトーナメント。女子はこの内3名と大勢力だ。
戦いが始まり、クリスは男子の部で善戦してベスト4、女子では、ハルリリーちゃんも善戦してベスト4に入った。先輩達よりずっと優秀だな。今年の新入生は。
そして、リリアちゃんが、優雅に舞う。気水流より、構えの低い錬身流の構えから、相手の攻撃を流れるような動きでかわすと、相手に一撃を加える。そして、
「女子の部優勝錬身流、リリアさん」
見事リリアちゃんが優勝した。
「良いぞ、白百合の騎士!」
誰かが叫ぶ。白百合? リリアだからか?。そして、白の神剣を持つ、天剣の1人。そう言えば、ローズも花だし、リコリスは何だっけ?
「マックス先輩、優勝しましたよ!」
「ああ、おめでとう。凄いね」
すると頭の中で、
「もう少し、ましなセリフはけ」
最近マキシも楽しんでいるようだ。頭の中で、楽しんでいる雰囲気と、僕のせりふに盛んに突っ込みが入ってくる。
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