第18話 ダブルデート
「あ、あのさ」
「お、おう」
「メーアで会ったリリアちゃんって、今マックスの部活の後輩でしょ?」
「うん、そうだよ」
なに! ドラグも、リリアちゃんに目をつけたのか? やらないぞ。絶対。って僕のものでもないか。
「で、リリアちゃんの友達で、ミンティリアちゃんって子がいるんだけど。その~。今度、4人で、出かけないかってリリアちゃんに言ってくれない」
「ん?」
「だから、4人でダブルデートしようって」
「はい?」
えーと、ドラグはリリアちゃんの友達が好きで、一緒に出かけたいから、僕がリリアちゃんに言って4人で出かけるということか?
ダブルデート? 来てくれるかな?
「わかった。ダメ元で聞いてみるよ」
「ありがとう、マックス! やはり持つべきものは、親友だ」
「ああ」
僕は、休み時間に1年の教室に行く。そして、1-A-1の教室にたどり着く。そして、近くにいた1年生に、
「僕は2年のマックスって言うんだけど、部活の、錬身流の後輩のリリアちゃん、呼んで来てくれるかな」
かなり、言い訳がましい呼び出しになってしまった。しかも、何で休み時間に来て呼び出しているのだろうか、部活の時にさらっと言えば良いじゃないか。何かドキドキする。
「はい、錬身流の先輩のマックス先輩ですね。呼んできます」
その子は、友達と話しているリリアちゃんの方に向かい、声をかける。リリアちゃんは振り返ると、こっちに軽快に走ってきた。
「どうしたんですか? マックス先輩」
「いや、ええと、ちょっとこっちへ」
「はい?」
僕は教室から少し離れ、廊下の端へ、リリアちゃんは、不思議そうな顔をしてついてくる。僕は、振り返ると
「リリアちゃん!」
「は、はい!」
「えーと、僕の親友で、ドラグってやつがいるんだけど。ミーアで、会ったと思うけど」
「は、はい」
「ドラグが、リリアちゃんの友達で、えーと、ミンティリアちゃんて子と出かけたいらしい」
「えっ?」
「で、えーと、リリアちゃんは、ミンティリアちゃんを誘って、僕とドラグ、リリアちゃん、ミンティリアちゃんで、休日出かけようって思うんだけど、話して貰って良い?」
「えーと、わたしが、ミントちゃんを誘うんですね?」
「うん」
「で、わたしと先輩も行くんですね?」
「うん」
「いわゆる、ダブルデートですね?」
「うん、ん?」
「ちょっと待ってて、下さい!」
「えっ?」
慌てて、教室に戻っていくリリアちゃん。どうしたんだ? 僕は、何かミスしたか?
しばらく待っていると、教室から悲鳴のような、歓声のような、女の子達の叫び声が聞こえた。そして、リリアちゃんと1人の女の子が、連れだってこちらに来る。
リリアちゃんは、長身でスラッとしたスタイルの清楚系美少女だが、もう1人の女の子は、リリアちゃんと比べると、やや身長が低く、少しぽっちゃり系だけど、可愛い感じの女の子である。2人は、僕の目の前に立つと、
「ミントちゃんも、大丈夫だそうです。ああ、じゃなくて、こっちが、わたしの友達のミンティリアちゃんです」
「はじめまして、ミンティリアです。友達からは、ミントって呼ばれています。ドラグ先輩と同じく弓道部です」
ん? 弓道部? だったら、自分で誘えよ、ドラグ。
「よろしく、ミントちゃん」
「リリアちゃんに、話良く聞いています。で、凄いイケメンですね」
「は、はい?」
「やめて、ミントちゃん!」
「ごめん、リリアちゃん」
良くわからないけど、どうやら出かけることは出来そうだ。任務完了。
「じゃあ、よろしく、楽しみにしているよ」
僕は、1年の教室を離れた。後ろでは、キャッキャ、キャッキャと叫声が響く。
「ドラグ言ってきたよ」
「えっ 今行ったの?」
「ああ」
「凄い大胆だな。一般公開じゃないか? まあ、マックスが良いならいいけど。で、どうだった」
「うん、OKだって」
「ありがとう、親友よ」
「で、どこ行くの? 何時にどこ集合?」
「僕の計画はね……」
そして、僕とドラグは私服で、借りた馬を連れて、街の噴水広場で2人を待つ、すると、待ち合わせ時間の5分前に2人が現れた。2人とも、私服だ。
リリアちゃんは、膝丈のワンピースにカーディガンを羽織り、ミントちゃんは、白のニットのセーターに、膝上のスカートだ。2人とも何かバックパックを背負っている。リリアちゃん、可愛い。頭の中から、同意する返事が聞こえる。
「お待たせしました、マックス先輩」
「いや、全然待ってないよ。そして、リリアちゃん、素敵な服だね」
「ありがとうございます。悩んだかいがありました」
と言って、可憐に笑う。お~。
僕とドラグは馬に跨がると、リリアちゃん、ミントちゃんにそれぞれ手を差し出して馬上に引き上げる。リリアちゃんは、軽快に鞍に乗ると、横座りで座って、僕の腰に手を回して、しっかりと捕まる。リリアちゃんが密着して、感触が……。いけない、いけない!
僕とドラグは馬を軽く走らせる。そして、街の門を抜けると、スピードを上げた。大丈夫かな? リリアちゃんの様子をちらっと見ると、風にスカートが煽られ、白い太ももが目に入った。お~。
「先輩」
「ん? 何? リリアちゃん」
「目がエッチな目してますよ」
「えっ、ごめん。その、リリアちゃんの太ももが目に入って」
「クスッ、大丈夫ですよ。先輩、気にしないで下さい」
何を気にしないで大丈夫なんだろ? 気になるけど、聞くのやめておこう。
僕達は、ドラグの考えた何気ないデートプランを楽しんだ。絶景の見えるハイキングコースを馬で走り、眼下に綺麗な湖の見える絶景スポットで、リリアちゃん、ミントちゃんが作ってきたお弁当を食べつつ、くだらない、他愛もない話を楽しんだ。
ミントちゃんは、料理上手のようだ、リリアちゃんは、頑張ったんですけど、と、少し形の悪い、料理の数々を哀しそうに披露した。僕は積極的に食べる。うん、形はちょっと悪いけど、味は美味しいぞ。
「いやいや、リリアちゃん美味しいよ」
「えっ? 本当ですか?」
リリアちゃんの顔に笑顔が戻った。
午後も、馬で走り、鍾乳洞を見たり、上流の綺麗な浅い川で、水遊びしたり、また、綺麗な花畑で座って4人で話したり。うん、他愛もないけど、楽しかった。
そして、夕方綺麗な夕陽が見える丘で馬を休めていると、ドラグが。
「ミントちゃん」
「は、はい」
「今日は楽しかった。ありがとう」
「いえ、ドラグ先輩ありがとうございました。わたしも、楽しかったです」
「それは、良かった。で、もし良かったら、また、どこかに出かけないかな? えっと、2人きりで」
「は、はい、嬉しいです。是非、よろしくお願いいたします」
どうやら、ドラグとミントちゃんは、うまくいったようだ、良かった。これで、本当に任務完了だな。僕は隣に立っている、リリアちゃんの方を向く。
「ドラグとミントちゃん、良かったね。上手くいって」
リリアちゃんは、少しうつむき加減で、チラチラとこっちを見ながら
「はい、良かったです。で、えーと、わたし達は、どうしますか?」
「えっ?」
すると、リリアちゃんは顔を上げ、頬っぺたをめいいっぱい膨らませた。珍しい反応だ。そして、可愛い。
「えっと、今度、どこかへ出かけよう。その、えーと、2人で」
すると、リリアちゃんは、満面の笑顔になり、
「はい!」
こうして、ダブルデートは、幕を閉じた。頭の中で声がする。ヘタレ。
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