第12話 答え合わせ
台所から漂ってくるのは、胃を刺激する肉の香り。聞こえてくる音も相まって、唾液が止まらなくなっていることを自覚する。
俺の予想は、ステーキだ。何か焼くもので、他に思いつくものがこれくらいしかない。焼肉が近いというのも、要因のひとつだ。……というか、むしろなぜそこに気がつかなかったのか……。
そう考えていると、蒼衣が台所から米とコーンスープを運んでくる。
「呼んでくれたら取りに行ったのに」
「台所まで来ちゃったら何かわかっちゃうじゃないですか」
「まあ、それもそうだが。あ、答えわかったぞ。ステーキだろ?」
その言葉に、蒼衣はにやり、と笑う。
「さあ、どうでしょう? 答えはもうちょっとお待ち下さい」
そう言って、蒼衣は台所へと戻っていく。……十中八九ステーキだと思うのだが。というか、この匂いでステーキじゃない、なんてことがあるのだろうか。
しばらくすると、大きめの皿2枚を持った蒼衣が現れる。そして、テーブルに置かれた皿の上に載っていたのは──
「やっぱりステーキじゃねえか」
「そうですよ。時間オーバーしてましたけど、一応は正解です」
そうしてテーブルに並んだのは、米、コーンスープ、サラダ、そしてステーキだ。手元に置かれたのは、ナイフとフォーク。
「ん? この部屋にナイフなんかあったか?」
この2年間で1度も使った覚えのないナイフに首を傾げる。知らない間に、蒼衣が買い足したのか、それとも俺が忘れていただけで、元々あったのか……。
「あ、それはわたしの部屋から持ってきました。ナイフが無かったのを忘れてまして」
よく見てみると、フォークとは少し異なるデザインがされているので、たしかに俺の部屋のものではないらしい。
「なるほど。……っていうか、蒼衣の部屋にはナイフがあったのか」
「引っ越しをするときに、一応買っておいたんですよ。使ったのなんて数回ですけどね」
「普段ナイフなんて使うか?」
「ホットケーキを作ったときくらいですかね」
「あー、ホットケーキか……」
たしかに、ナイフを使うもののひとつだ。……俺は切るのが面倒で、そのままフォークで突き刺して食っていた覚えがあるけれど。
久しぶりにホットケーキも食べたい。蒼衣に頼めば作ってくれるだろうか。そう思っていると、蒼衣が口を開く。
「そんなことより、早く食べちゃいましょう。わざわざ食べる直前に焼いたのは、冷めないうちに食べるためなんですから!」
「ん、ああ、そうだな」
俺と蒼衣は、揃っていただきます、と呟き、ナイフとフォークを手に取った。
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