第23章 3月14日
第1話 正解のない難関
「はああああああ……」
3月14日。ついに訪れたホワイトデーに、俺は盛大にため息を吐いていた。
数日前、告白をしようと、覚悟を決めた。それはよかったのだが。
「……タイミングがわからねえ……」
これまで、20年間自分から告白をしたことのなかった俺は、告白の仕方がわからないのだ。場所をはじめとするシチュエーションや、タイミングを知らない。
そのせいで俺は、あれから3日間もあったにもかかわらず、何も言えずにいた。
「これだと今までと変わらないな……」
そう呟きながら、自分のダメさ加減を改めて思い知る。
……なんとかして、こう、いい感じの状況が出来るといいのだが。
うーむ、と唸りながら、ちらりと視界の端に映ったものを見る。
部屋の端に置かれた少し大きめのビニール袋。中身は、今朝買ってきた雨空へのホワイトデーのお返しだ。
「ホワイトデー……ホワイトデーだよな……」
このイベントデーを、上手く使って出来るだろうか。……そんなことが、俺に出来るのか……?
うんうん唸って頭をベッドに預ける。こんなに難しいことを世の中のカップルやら夫婦は経験してきたのだと思うと、尊敬を通り越してもはや恐ろしい。
「どうするのが正解なんだ……」
もう、勢いで行くべきなのか……?
そう思いながら布団に頭を載せていると、ガチャリ、と玄関から音がする。
もちろん、入ってきたのは雨空だ。
「あれ、まだお昼前なのに起きてるの珍しいですね」
「俺だって起きてるときもあっただろ?」
布団から頭を上げ、雨空を見る。珍しいとは心外だ。俺も起きるときは起きるのだ。
「先輩が起きているときって、寝てないときと、たまたま目が覚めたときのどちらかじゃないですか」
「いや、そんなことは……」
ふと、思い浮かべる。
「あるかもしれないな……」
「ほら、やっぱりじゃないですか」
俺、基本的に朝起きないからなあ……。
今日も、朝からホワイトデーのお返しを買いに行くために外へ出ていたのだ。それがなかったら間違いなく寝ていただろう。
俺の納得に満足がいったのか、雨空が冷蔵庫の中身を確認しに台所へと歩いていく。
その後ろ姿を見ながら。
……お返し、どのタイミングで渡そうか……。
さあ、告白よりも難易度は低いが、期限の決まっている試練のはじまりだ。
……いや、本当にどうしようか。
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