第6話 初心者向けでも難しい
「……」
「……」
俺たちは、リザルト画面を前に無言になっていた。俺の順位は変動するものの、5位以内にはいる。対して雨空は、微動だにせず最下位である。
リザルト画面をまた睨みつけ、雨空が口を開く。
「……先輩、1番簡単な、初心者向けコースをお願いします」
「最初からそう言えばいいものを……」
「だってここまで出来ないとは思いませんでしたし……」
「まあ、俺も予想外だったが……」
コントローラーを操作して、最も簡単なコースを選ぶ。
「……さすがにこれはいけるよな?」
「……さすがにいけると信じたいです」
自信を完全に失った雨空は、苦笑いしながらコントローラーを握り直した。
それと同時、画面が切り替わりレーススタートまでのカウントがはじまる。
3……2……1……。
パーン! と甲高い音がして、レースがはじまる。いつも通りのスタードダッシュを決めて、ちらりと雨空側の画面を見ると──
「……うぅ……」
力みすぎたらしく、エンストしていた。
「ま、まだです。ここから巻き返せるはず……!」
エンスト状態から復帰し、再度スタートをした雨空は、一応は順調に進む。
「直角カーブさえなければなんとかなります!」
そう言いながら、雨空の操作するキャラクターは、コースの道からカーブの度に外れて減速を繰り返している。
「なんとかなってはないな」
「方向は正しいのでセーフです!」
そう言いながらあっちにぶつかりこっちに飛び出し、と進む雨空は、もちろん最下位だ。……下手すぎでは?
途中、何度かアイテムで巻き返していたものの、結局最後まで下の順位で争っていた。
リザルト画面には、俺が1位で、雨空がやはり最下位と示されている。
「……先輩」
「どうした」
「……勝てないので別のゲームにしましょう」
「お、おう……」
雨空は、ゲームを中断し、ゲームリストから次にプレイするものを探しはじめた。
……勝てないからやめるって、小学生みたいな理由だな……。
次に選ぶゲームが、それなりに雨空も出来るものであることを願いながら、画面を見る。
「これにします!」
そして、雨空が選んだゲームは──
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