エピローグ2 まだまだまだまだ

「……はぁ……」


エレベーターに乗り込んで、思わず吐息が漏れる。


とくん、とくんと心臓は早鐘を打っていて、未だに落ち着く様子はない。


「まさか、先輩から手を握ってもらえるなんて……」


さっきまで先輩と繋がっていた左手を、胸の前で握りしめる。


「……え、へへ」


だらしない声が思わず漏れる。今、わたしの顔は他の人には見せられないことになっているだろう。……まだ部屋じゃないんだから、引き締めないと。


くい、とマフラーを口元に引き寄せ、気持ちを引き締める。……これ、先輩がくれたマフラー……。


……! 引き締めないと!


そう思い、なんとか部屋までたどり着く。誰ともすれ違わなくてよかった……。


「……へへ」


部屋の鍵を閉めると、気が緩んだのか、また声が漏れる。


玄関の姿見には、自分でも見たことのないほどに緩んだ表情の顔が映っている。


「……はぁ……」


またも息を吐いて、内側で暴れそうな気持ちを落ち着かせる。


きゅぅ、と胸の締め付けられる感じは、不思議と嫌な感じがしないどころか、むしろ心地が良い。


胸に添えるように、左手を右手で包み込む。


確実に、前に進めている。


ゆっくりではあるけれど、それでもきっと、先輩はわたしのことを、好きになってくれている。


そう思うから。


「明日からも、頑張ろう……!」


まだまだ、アピールを続けて、先輩にさらに好きになってもらわないと。


先輩の隣は、わたしの場所だ。


だから。


「覚悟してくださいね、先輩」


次は、年末年始。まだまだ手は緩めるつもりはありませんからね! 先輩!

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