エピローグ 近づく誕生日
それから、じっくりと夜まで時間をかけて、俺たちは寿司とピザを食べ続けた。
というか、小腹が空いたら食べる、という感覚だ。ずっと食べていたわけではない。
それでも、あの量は多かったらしく、生物の寿司は食べ切ったが、ピザは冷蔵庫に放り込まれた。次は1枚だけにしよう。
ぺちぺちと画面を移動させながら、スマホに映る日付を確認する。
11月25日。
雨空の誕生日である12月7日まで、あと2週間を切っている。
「……なあ、雨空」
「なんですか?」
ベッドに寝転がる俺を、床に座る雨空がちらり、と見る。
「再来週の月曜日、空いてるか?」
「再来週の月曜日、ですか……? ……! あ、空いてます!」
不思議そうにしていたが、どうやら気がついたらしい。
「なら、そこ空けといてくれ」
なんとなく、恥ずかしくなって目線を逸らす。
「わかりました! しっかり空けておきます! ……講義はありますけど」
「それは俺もだからな。……よし、そろそろいい時間だし、解散だ。明日は普通に講義あるからな」
ぱん、と手を鳴らすと、テンションの上がった雨空が立ち上がる。
「ですね。明日もしっかり起こしに来ますので」
「おう、毎日助かる」
「いいんですよ。日課ですから」
「俺が言うのはどうかと思うが、その日課はどうなんだろうな……」
「わたしが好きでやってるので、いいんです」
軽快なステップで、雨空は玄関まで移動する。
「じゃ、気をつけてな」
「はい。すぐそこですけどね」
「一応、だ」
「わかってますよ。では先輩、おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
そう言って、雨空は扉を開ける。
部屋に、冷たい空気が流れ込んできた。洒落にならない寒さだ。
そんな寒さをもろともせず、雨空は軽やかに階段を降り、隣のマンションへと向かう。
エントランスに入るのを見届けてから、俺は寒さから逃れるように部屋へと入る。
「寒い寒い寒い……っと」
鍵を閉め、そそくさと部屋へと戻る。
さて。
「雨空の誕生日、どうするかな……」
女の子の誕生日どころか、友人の誕生日すらまともに祝ったことのない俺は、部屋に入り込む隙間風に凍えながら、ベッドの中でとにかく考えるのだった。
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