第15章 11月4日

第1話 下がるは気温と

程よく暖かかった季節は過ぎ、日に日に下がる最高気温と最低気温にうんざりしながら日々を過ごしている。


まあ、簡単な話。


「さむぅ……」


それだけだ。


気温が下がれば、当然室内温度も下がるわけで。特にボロアパートの1室である、俺の部屋は隙間から冷気が入り込んでくる。初冬でこれってこの後大丈夫か……?


珍しく自分で目を覚ましたものの、この布団の中との気温差では動けない。仕方ない、二度寝をするしかない。


いやあ、布団はいいなあ。暖かい。


ゆっくりと下がる目蓋を自覚しながら、暖かい布団に抱かれてそのまま──


がちゃり。


とてとてとて。


……足音が聞こえるということは。


「先輩、朝ですよー。起きてくださーい」


ゆさゆさと俺を揺するのは、少し厚手のパーカーを着ている雨空だ。


「……起きてます」


のそ、と首から上だけを布団から出すと、雨空は少し驚いた表情を見せる。


「あれ、珍しいですね。でも、目を瞑って布団に入っているのはほぼ寝てるのと同じです。ほら、起きてください」


「……寒い」


だから起きたくない、と視線で訴える。


「そうですね、起きてください」


にっこりと笑いながら、有無を言わさぬ視線が返ってきた。


「……はい」


最高気温と最低気温が下がるように、俺も日に日に雨空に対して弱くなってる気がするんだよなあ。

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