第12話 聞いてほしいこと

「……どうぞ」


「い、いただきます……」


トーストとコーンスープという、簡単な朝食を、昨夜と同じくふたりでテーブルに座り、食べる。


だが、昨夜と違うのは空気感だ。


あれだけ大胆な告白と宣言をされてしまうと、こちらとしては、どう接していいかわからないのだ。


だが、ひとつだけ、絶対に言っておかなければならないことがある。


「……なあ」


「っ! ……はい」


「昨日の、ことなんだが」


「は、はい。その、昨日のは、ええと、う、 嘘、ではなくて本気ですけど、あのその」


わたわた慌てる様子は可愛いのだが、今はそれどころではない。


「俺が、どうして裏切られることを怖がってるか、なんだが」


「……! はい」


そう、これだけは言っておかなければならない。これが、最後に隠していることだから。もし仮に、雨空がこの呪いのようなトラウマを断ち切ってくれるというのなら。俺は知っておいて欲しいと思うのだ。


……まあ、なんら大したことではない。よくある話だ。男性諸兄は身に覚えのある人も多いかもしれない。


「小学校の頃、俺には好きな女の子がいたんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る