第3話 ラーメン屋といえば……

店へと着いた俺たちは、運良く10分ほどで店内へと入ることができた。


「今日はマジで運がいい。ここ昼とか夜とか飯の時間は基本30分待ちなんだよ」


「そんなにですか。ここ有名店なんですか?」


「わりとな。時々雑誌にも載ってるらしいぞ」


「へえ、ということは味に期待しても?」


「もちろん、ここは美味いぞ。マジで」


「それで、先輩のおすすめはどれなんです?」


「これだ」


俺は、メニュー表のひとつを指差す。


「魚介つけ麺、ですか?」


「そう。これが美味い。味もしっかりしてるし」


「はじめてのラーメン屋で食べるのがつけ麺……?」


そう、俺たちが今いるのはラーメン屋だ。


ラーメン屋でつけ麺を注文する。一見、間違っているように見えるかもしれないが、実はそちらの方が間違いだ。


美味いラーメン屋が出しているつけ麺は、当然の如く美味い。下手をすればラーメンより美味いのだ。


「まあ騙されたと思って食ってみろ。食えばわかる」


「別に美味しいことを疑ってはないですよ。ただ、なぜあえてつけ麺なのかな、と」


「そりゃつけ麺がこの店で一番美味いと俺が思ってるからだ。というかこのあたりの店で一番美味いぞ」


「え、この辺りのラーメン店食べ歩いたんですか?」


「そりゃ当然」


男子大学生は、なぜかラーメンを食いたがる生き物だ。少なくとも、俺が知ってる奴らはラーメンばっかり食ってる。もしくは酒。不摂生にもほどがあるな?


かく言う俺も、例にも漏れず、雨空と出会うまで、外食するとラーメンばっかり食っていた。ラーメン、美味いし中毒性があるんだよな。無性に食いたくなる。


そんなわけで、この辺りのラーメン屋には詳しい。


……まあ、ラーメン屋に限らずこの辺りの飲食店は制覇したのだが。


「とりあえず、注文はつけ麺でいいか?」


「はい、今日は先輩おすすめのつけ麺にしてみます」


「了解」


店員を呼び、つけ麺を2人前注文する。もう慣れたものだ。


程なくして、注文していたつけ麺がテーブルへと運ばれてくる。至ってシンプルな、太麺とつけ汁だ。


「見た感じは普通ですね。つけ汁がすっごくいい匂いしてます」


「だろ?」


二人で「いただきます」と呟き、麺をつけ汁へと移す。そして、しっかりと絡めた後、思いっきり麺をすすった。

かつおだしベースのつけ汁が、太麺とよくあっている。やっぱり美味い。


「ん、美味しいですね!」


「だろ?」


「味はしっかりしてるのに、あんまり重くないですし」


「どうよ、要求通りだろ?」


「わたしが求めてたのはまさにこのくらいです……!」


そう言って、雨空は目を輝かせて麺をすすった。

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