第4話 買い出しは後輩と共に

今日の講義は、雨空と同じく3限までだったので、合流した俺たちは大学近くのスーパーに来ていた。

アパートと大学の間にある唯一のスーパーなので、利用者の多くは大学生だ。

そんなスーパーに俺たちがいる理由は──


「先輩、卵はあるので大丈夫です」


「あ、そう。ウインナーは?」


「ないです」


オムライスの食材を買いにきたのだ。


俺ひとりでもよかったのだが、冷蔵庫になにがあるかは、俺は把握していない。そのため、雨空も付いてきた、というところだ。……改めて考えると、自分の冷蔵庫の中身を把握してないの、おかしいな……。


オムライス一通りの食材と、雨空が安いと思った食材を買い、レジへと向かう。

その途中、俺はふと思い出した。


「あ、そうだ。あれ買って行こうぜ」


「あれ? なんですか?」


「アイスだよアイス」


そう言いながら、俺は進行方向にあるアイスのコーナーを指差す。


今朝、話題に上がっていたアイス。これからの季節、常備しておくに越したことはない。


「いいですね、何にしましょうか」


アイスのコーナーを覗き込む雨空を見ながら、俺はとある箱アイスをカゴへと入れる。


「モナカアイスは外せないな」


俺は個人的に、これが一番食べ応えがあると思っている。ボリューム感が他と違う。


「なるほどそうきましたか……。ならわたしはこれですね」


そう言って雨空がカゴへと入れてきたのは、王道と言って差し支えない、チョコでコーティングされたバニラアイスだ。


「たしかにこれは美味いよな。外のパリパリが美味い」


「あとはこれです」


次に雨空が入れてきたのもまた王道。ソーダアイスだ。


「これ食うとなんか夏って感じするよな」


「夏の風物詩みたいなものですからね。あとは……」


「待て、雨空。これ以上はダメだ」


「3箱くらいすぐになくなりません?」


こてん、と首を傾げる雨空。言いたいことはわかる。よくわかるのだが、そうではないのだ。


「冷凍庫のサイズを考えろ」


「あっ」


「そういうことだ。行くぞ」


「はい、うっかりしてました」


雨空は、苦笑を浮かべる。


「ま、これが無くなりそうになったらまた帰りに買って帰ろうぜ」


「はい、そうですね」


慌てなくても、定番商品は無くなるわけではない。それに夏はまだ始まってもいないのだ。長い夏に想いを馳せると、直前にあるレポートとテストの存在が思い出され、嫌になる。


そんなくだらないことを考えているうちに、レジは俺の番が回ってくる。最近流行りのキャッシュレス払いで手早く会計を済ませると、雨空が手早く持参したマイバッグに詰めていく。


「マイバッグいつも持ってんのか?」


ふと気になり、聞いてみる。


「持ってますよ。帰り道に寄ることが多いので」


「あー、たしかに講義終わりに買って帰ってきてるなあ」


思い出してみると、毎回雨空が買い物をしてくるのは大学のある日だ。


「まあ、わざわざここまでくるのめんどくせえしな。大学帰りに来る方が賢いか」


「そういうことです。さて、行きましょうか」


詰め終わった雨空から荷物を半ば奪い取り、帰路へとつく。


沈む夕日が照らす茜色の空が、とても綺麗だった。

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