第2章 6月5日
第1話 何の変哲もない朝
俺の朝は早い。なぜなら、雨空のかけたアラームが鳴り響くからだ。そしてこれまた雨空の置いて行った目覚まし時計を、叩き割る勢いで止め、もう一度夢の世界へと潜る。
そして、5分後、雨空に叩き起こされる。
「先輩。起きてください。せんぱーい」
「んぁ」
「ほら、朝ですよー」
そう揺さぶる雨空から逃れるように掛け布団を頭までかぶる。
「太陽が出てる。寝る」
「人間は夜行性じゃないです。それに8時半には基本太陽は出てます。ほら、そろそろギリギリですよ」
「うぅ……どうして一限に講義があるんだ……」
思わず恨み言を漏らすと雨空は、
「それはこの大学の2回生のゼミが一限からって決まってるからです。早くしないとゼミの単位、もらえませんよ」
と、呆れたように言葉を返す。
「……うぅ……着替えるわ……」
寝ることを諦め、もそもそとベッドから這い出る。大学生は単位という言葉に弱い。同じくらい睡魔にも弱いが。
雨空は、俺の言葉を聞いてキッチンに待避。その間にサッと身支度を済ませる。
本日のコーデはその辺にあったチノパン、その辺にあったTシャツだ。……いや、これをコーデとは呼ばないな。
洗面所に向かい、水で顔を洗う。鏡に映った男の顔は、全くもって覇気がない。眠いからね、仕方ないね。
跳ねた髪を直すのは面倒くさい。それに時間もかかるし。そう思い、諦めて戻ろうとして──やっぱり、直すことにした。
雨空は、俺の髪が跳ねていると直したがる。どうせ直すのなら、自分で直した方が早い。ちらり、と腕時計を一瞥し、残り時間を確認。その時間をギリギリまでかけて、跳ねた髪を濡らして押さえて乾かして。
「……やっぱ直らねえな」
やっぱり諦めた。
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