膝枕
ファンタジア文庫様より、書籍8/20発売予定です!!!
書影は、ホームページ及び近況ノートにて公開しております!!
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「うがぁ……」
放課後。
家に帰り、早速狭いお部屋に存在する癒しのベッドへと飛び込む。
最近干したばかりだからか、柔らかい感触とお日様の匂いが微かに俺を包み込んでくれるような気がした。
「どうしたんですか? お疲れのようですけど……」
すっかり慣れすぎてしまった柊が鞄を置いて、テーブルの前へと座る。
こうして普通に帰る部屋が俺のところというのは、もはや同棲していると呼んでいいのではないだろうか?
それに、今座った場所も、すでに柊が座るだろうと判断して自然と空けてしまったスペースでもある。
「実行委員……めんどくさい」
「ふふっ、そういうことですか」
「無理やりやらされて、やらされて、やらされたんだぞ? 文句の一つも言いたくなるわ」
「ずっと文句を言っていたような気が……」
「言ってたな」
そこを指摘されるなんて、柊も遠慮がなくなってきたなぁ。
「基本的に部活も何にもしてないからな。何かあれば疲れた感じになる」
「その気持ちは何となくですが分かりますよ! でも、私はこういうお仕事も楽しいって思ってます!」
なんの臆面もない純粋な瞳が笑顔と一緒に向けられる。
……どうしてだろう? 柊を見ていると「うじうじうっせーな、男だろ!?」と己を怒りたくなってしまう気がした。
「まぁ、楽しいんならいいけど……」
「ですが、お疲れはよくないですね」
「寝れば疲れも取れるだろ? まだ若いし、大丈夫大丈夫」
「そうかもしれませんが……お体に何かあったらいけませんし……」
顎に人差し指を添えて、何か考え始める柊。
何を考えているのだろうか? 確かに疲れているが、さっきも言った通り寝れば翌日にはスッキリしているし、懸念するようなことは何も――――
「そうですっ!」
すると、柊は何かを思い出したのか、両手を合わせて嬉しそうに笑った。
その笑顔が、どこか可愛くて眩しく感じてしまう。
「如月さん――――」
そして、柊が俺の方を向いて己の膝をぽんぽんと叩き始めた。
「膝枕……しませんか?」
「まさか、その発想に至るとは……ッ!?」
なんて恐ろしいことを考えるんだ柊は……!
膝枕ってあれだろ? 柊のほどよく肉付きのいい太ももに俺の頬の一部と頭を預けることによって、自然と枕にさせて横になる行為だろ?
……考えるだけで恐ろしい。
女性に免疫のない男子が膝枕をされたらどんな感情を抱くか……当然、猿も真っ盛りな盛り気分を抱いてしまうに違いない。
(それに、相手は柊だぞ……っ!)
考えるだけで顔に熱が昇っていくのを感じる。
他の女の子よりも容姿が整い、特別な感情を抱いている相手だからこそ、抱く気持ちは他の女の子よりも上。
更に、今は制服————タイツを吐いていないということは、生足が直に触れてしまうということ!
それは……かなりやばい。
正直、理性の歯止めが効かなくなる可能性が高い。
歯止めが効かない情けない姿を柊に見せると言うのか? 嫌われたらどうする?
「如月さん……膝枕、お好きじゃなかったですか?」
大好きだ。
「そ、それとも……私じゃ、いや……ですかね」
……そんなことはない。
誰しも……というより、意中の相手の膝枕何て、俺はめちゃくちゃしてほしい。
だけど、理性の問題なんだ。
というより、男としての威厳が損なわれないか心配なんだ。
でも――――
(この機会を逃したら……次はないような気がする!)
最近は少し……自分で言うのもなんだが、積極的になって来たと思う。
だがしかし、柊は元から恥ずかしがり屋さん……こうして平静を装ったまま柊の方から言ってくるのは、今日が最後かもしれない。
まぁ、人のいい柊のことだ……言えばしてくれるだろう。
だが、無理やりはよくない。あくまで、本人が嫌がっていないことが条件になる。
となれば――――
「くそっ! 俺はどっちを選べばいいんだ!」
「そ、そんなに必死に悩むことなんですか……?」
脳内天秤が重りを乗せる。
そして、体感時間三十分という長きに渡る葛藤の末――――
「お、お願いしてもよろしいでしょうか……っ!」
「如月さん、顔。顔が凄いことになってます」
その言葉を聞くと、俺がどういう表情でお願いをしているのか、鏡で見るのが怖くなってきた。
「そんなに悩まれることなのでしょうか……?」
柊は不思議そうに首を傾げながらも、俺に向かって正座したまま体を向けてくる。
そして、そのまま膝をもう一度叩き、俺に頭を置くよう促した。
「では、どうぞっ!」
「し、失礼します……」
俺はベッドから降りると、そのまま体を横に倒して柊の膝の上に頭を乗せた。
その瞬間……訪れるのは柔らかい感触と、スカートの布地のざらざら具合。さらに、一部分だけ感じる……ひんやりとした肌の感触であった。
「ど、どうでしょうか……?」
柊が俺の顔を覗き込みながら尋ねてくる。
今更ながら恥ずかしいと思ったのか、その頬は朱に染まっていた。
(どうって……どうって言われてもなぁ……?)
この状態。
この角度。
顔を上げれば、眼前に柊の顔が間近に映る。
仄かに鼻腔を擽る柑橘系の匂いが、胸を高鳴らせて来る。
相対的に見て――――
「さ、最高です……としか……」
「そ、それならよかったです……」
とりあえず、柊の顔は見れないまま、そう答えるしかなかった。
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