久しぶりの3人

 颯太達の喧嘩が解決して、しばらく。

 たわいのない談笑と、今度みんなで遊ぼうと約束をした。


 俺達も実家に遊びに行ってたからなぁ……。

 学校もないので、こうしてみなで話したのも久しぶりな気がする。


 そして、神無月と柊は家に帰っていった。

 神無月は今から親と食事に行くらしく、柊に関しては突然、クラスの女の子から映画に行かないと誘われたそうな。


 ……帰るのは夕方って言ってたし、迎えに行くか。


「そんで?お前達は帰んないのかよ?」


 俺は未だに我が部屋でくつろぐ2人に尋ねる。


「別にいいじゃない。外暑いんだから」


「真中さえ迷惑じゃなかったらの話だけどね」


 まぁ、別に迷惑じゃないけどよ……。

 一応エアコンも効かせてあるし、蝉が鳴くこの外の暑さは嫌なのは分かる。


 俺だって外に行くのやだよ。

 ビバ、インドア生活!


 外に出るのって嫌だよね!


「別に構わねぇよ、どうせ柊も帰ってくるのが夕方だしな」


「あら? すっかり同棲が板についてるじゃない?」


 そう言って、藤堂がからかうような笑みをこちらに向ける。


「からかうなよ……」


「けど、ここの所毎日一緒にいるんだろう?」


「否定はしねぇ」


 夏休みに入ってからというもの。

 日数は経っていないが、晩飯一緒に食ったりゴロゴロして毎日一緒にいた記憶がある。


 だからこそ、一緒にいると言われても否定ができない。


「それにしても、こうして三人だけって久しぶりじゃないか?」


 中学で一緒にいた三人に柊が加わり、最近では神無月も一緒にいることが増えた。

 そうした日々が続いているうちに、3人で過ごす日がなかったような気がしたのだ。


「そうだね、確かに夏休みもこれが初めてだし」


「何だかんだ、入学してからもすぐにステラが来たわよね」


 そう言えば、そうだよなぁ……。

 柊と関わってからは、ずっと一緒にいたし、一緒にいて不思議と違和感なかったし、居心地がーーーー


(……あれ?)


 そう考え始めた瞬間、ふと違和感に気づいた。


(どうして、柊と一緒にいる事がこんなにも心地良かったんだ?)


 当初から違和感なんて感じたこともないもの。

 別に、大それたことではない。

 在り来りの、どこにでもあるような感覚。


 いつも一緒にいることが当たり前でーーーー


(……いや、決めつけるのは早計か)


 己の中で戒める。

 特段、これだけで決めることもないだろう。


「初めは、私も警戒したものだわ」


「一緒に帰ってる時、ずっと言ってたよね」


 二人が話に花を咲かせる。


「……ん?ずっと言ってたって?」


「いや、僕達の恩人なんだよ真中は。だから、恩人に近づくステラが変な子じゃないかなーって。心配だったんだ」


「やめてよ、恥ずかしいんだから」


 そう言って、肘をつつく藤堂。


「別に、恩人じゃないって言ってるだろ? 俺は、別に大したことはしてねぇよ」


「違うわ」


 俺が被りを振ると、藤堂はピシャリと言い放つ。


「私は、あんたを恩人だと思ってる。私と颯太の喧嘩を仲裁してくれたあの時からーーーーあんたは、私の恩人。でなきゃ、私はこんなに感謝なんてしてない」


 先程の顔は一体どこに行ったのか?

 至って真面目な顔つきで、彼女は俺の顔を見やる。


「あんたには、今回の事も含めて本当に感謝してるわ。こうして、今颯太とこの関係でいられるのも、元を正せばあんたのおかげ……ありがと」


「そうかい……」


「僕からもありがとう。深雪と仲直りできたのも、真中のおかげだよ」


 2人の言葉に、少し照れくさくなってしまう。

 別に、そこまで感謝される筋合いはないんだがなぁ……。


「俺は、ただお前達がギクシャクしているのが気に食わないだけだ。全ては俺の為ーーーー感謝されるようなことはしてねぇよ」


 そう、本当に感謝されるようなことはしていないんだ。

 ただ話を聞いて、仲直りできるかな? と促しただけ。


「いつか、お礼をしないとね」


「そうだね……お礼はしなくちゃね」


「別にいらねぇっての」


 そう、本当にお礼をされるようなことはしていない。

 俺は友達として、当たり前のことをしただけ、本当に感謝されることはーーーー


(いや……どうせだったらあの事聞いてみるか)


 当初聞いてみようと思っていた事。

 柊も神無月もいない今、聞いてみるのもいいかもしれない。


「なぁ……」


「何かな?」


「お前が藤堂と付き合った理由って教えてくれね?」


 付き合った理由。

 それぞれ千差万別多種多様な理由があるのは分かってる。


 参考にするだけで、自分の気持ちを歪めるつもりはない。


 だけど、聞いてみたかったんだ。

 他の人はどんな想いで付き合ったのか。


 何をきっかけに付き合ったのか。


「そうだね……」


 しばしの沈黙が訪れる。

 そしてーーーー



「私もそうね……もちろん、颯太に色んな理由があったからだけどーーーー一番は居心地がいいからね」


 二人の意見は一緒。

 それぞれ他の理由もあったのだろうが、集約する場所は同じ。


(居心地……かぁ)


「何よ? あんた、まさか告白されたの?」


 藤堂がからかうような顔つきで笑う。


「あぁ……俺は告白されたよ」


 別に隠す訳でもない。

 ここは正直に答えておこうか。

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