作戦会議です!

「さて……皆でこの現状を打破する為に、作戦会議といこうじゃないか」


 現在、午前中の授業も終わり、俺達は楽しく食堂で昼飯を食べていた。

 しかし、俺は至って真面目に、集まった3人に向かって言葉を放つ。


「まぁ……確かに、この状況はまずいよね……」


 俺の言葉を聞いて、颯太は周りを見渡す。

 周囲には楽しく学食に舌鼓をうっている生徒―――――ではなく、殺気を放つ生徒で溢れかえっていた。


 そして、その対象は……俺。

 みんなフォーク片手に歯ぎしりなんかしてますよ。

 あぁ、やだやだ。人気者は辛いねぇ。

 え?羨ましいって?

 ははは、だったら代わってあげようじゃないか!

 お断りだって?遠慮しなくてもいいって!ほら!さぁ!代わってあげるから!

 いや、マジで……本気で代わってあげるから……。


「すみません……私の所為で…」


 横ではしゅんと肩を落として落ち込んでいる柊の姿。


「気にするな……元はと言えば、俺が手を繋いだ所為でもあるからな」


「うぅ……で、ですが!私も何とかするために協力しますから!」


 うんうん、偉いねぇー。頑張ってくれるなんてお兄ちゃん嬉しいよ。


「そうだな、ぜひ頼むわ。お前も、俺と付き合っているっていう噂を流されて迷惑してるもんな」


 そう、問題は殺気立っている男子達だけではない。

 あの写真を見た大体の女性陣と、一部の男子の間で俺達が付き合っているのではないか?という噂が流れている。


 このまま放置すれば、あっという間に学校中に広がってしまい、訂正することが難しくなる。

 だから、広がり始めている今のうちに何とかしないといけないのだ。


「べ、別に……迷惑とかじゃ……」


「ん?」


「な、なんでもありません!さぁ、早く解決しないとですね!」


 どうしたんだろうか柊は?

 小声で何か呟いたかと思えば急に慌てだして………変なやつ。


「なんで私まで協力しないといけないのよ…」


 そして、颯太の横でため息をつきながらパスタを食べる藤堂。


「友達の危機なんだ。助けてくれたっていいだろう?」


「いやよ、なんでこんな事であんたを助けないといけないのよ?」


 全く……冷たい戦乙女さんなこと。

 こんなやつのどこが良かったのかね颯太は?


 ……やむを得まい。

 あれを使うしかないようだ。


「なぁ、藤堂」


「何よ?」


「もし、この現状を解決するために協力してくれたら、俺が持っている颯太の昔の写真を「協力するわ」流石だ、藤堂」


 即答で、俺に協力を申し出てくれた藤堂。

 颯太Loveのお前なら協力してくれると信じていたぞ。


「ねぇ、なんで真中が僕の昔の写真を持ってるの?」


「あぁ、いざって時用にお袋さんから貰ったんだ」


「何してるの母さん……」


 颯太は頭を抱える。


 何をそんなに疲れているのかね我が親友は?

 別にいいじゃないか。お袋さんのおかげで、こうして仲間が増えたんだから。

 本当に、お袋さんには感謝感謝である。


「まぁ、とにかくだ。1番手っ取り早いのは犯人を見つけることだな。その上で校内新聞の内容は否定してもらって、それを学校中に流してもらう」


「そうだね」


「でも…犯人ってどんな人なのでしょうか?」


 柊は顎に指を当てて考える。


「俺が予想するに、犯人は新聞部の生徒か、新聞部に所属している生徒、新聞部に出入りしている生徒の2人だ」


「待ちなさい如月。それは2人じゃなくて3人よ」


「僕からしたら1人だと思うけどね……」


 そこ、俺の名推理に横から口を挟むんじゃないよ。

 全く……君たちは空気というものが読めないのかね?


「ですが、新聞部が校内新聞を書いたとしても、写真を撮った人と同じであるとは限りませんよ?」


 確かに、もしかしたら新聞部は記事を書いただけで、実際に写真を撮った人とは別人かもしれない。

 噂を消そうにも、元写真のデータが残っていれば、またどこかで噂が復活するかもしれない。

 どちらかといえば、今回は記事の内容でなくて、写真が問題なのだから。


 記事の内容は否定できる。

 けど、写真だけは否定しきれないからな。


「大丈夫だ、そこは考えがある」


「そうなんですか?」


「あぁ、どちらにしろ校内新聞を作ったのは新聞部だ。そいつらに写真提供者を聞き出せばいいからな」


「なるほど……」


 納得していただけたようで何より。


「でも、そう簡単に情報を教えてくれるかな?」


「あら?それは大丈夫だと思うわよ?」


「どうしてだい、深雪?」


「だって、体に聞けばいいだけの事じゃない」


 ……流石だ藤堂。

 その暴力的発言を躊躇なく、澄み切った眼で言えるなんて……将来が恐ろしいな。


「その通りだ藤堂。たとえ口が開かなくても、体に聞けば一発で分かるからな」


「口を開かなかったら聞けないと思うけど……」


 そんなことないさ。

 鈍器とスタンガンを持ってさえすれば、基本的体はよく喋ってくれるから。

 まぁ……最終的には口も開くと思うがな。


「そして、そこで新聞部が写真を撮ったなら、写真を消してもらうようにお願いをして、他に提供者がいるなら、そいつにお願いする」


「もちろん、お願いの方法は―――――」


「あぁ……躊躇わずに体にお願いだ」


「ふふっ、よく分かってるじゃない」


 当たり前だ。

 俺がこれぐらいのピンチを乗り超えたことなんて数え切れないんだぜ?

 どうすればお願いを聞いてくれるかなんて熟知しているのさ。


「桜木さん……私、この2人が少し怖いのですが……」


「うん、それは僕も思っているよ……」


「……平和的解決は?」


「……しないだろうね」


「な、なんだか、あそこで騒いでいる人達と2人が同じ感じに見えてきました……」


 何をヒソヒソと話しているのかね柊と颯太は?

 こっちは真面目に作戦会議をしているというのに、集中して欲しいものだ。


「じゃあ、早速放課後に新聞部に会いに行くか」


「えぇ」


「そうだね……」


「そうですね……」







 こうして、とりあえずの方針は決めて、俺達の作戦会議は終了となった。



 見てろよ犯人……必ずこの噂を消して見せるからな!

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