煉獄にて

作者 糸川まる

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★★★ Excellent!!!

 たた数行を読んだだけで、あらすじにある「妙に既視感のある施設」が浮かぶ筆致に圧倒されます。

 心理描写、状況描写の緻密さに対し、情景描写が最低限に留められている所に、この既視感を刺激されているように思います。物語に引き込まれる丁寧な文章があるからこそ想像力が刺激され、描写されていない部屋の情景まで浮かんでしまいました。

 題名に煉獄という単語が使われているのも興味を引かれます。地獄へ行く程ではない罪人が、その罪を炎によって浄化される所といわれる場所ですが、この物語には炎こそ出ないものの、その罪を消す場所を指す言葉ですが、この物語は死後の世界ではなく現実です。

 天国も極楽もない現実で、果たして煉獄とは如何なる場所なのか…という事を考えてしまう、幻想的な闇がありました。

★★★ Excellent!!!

難解です。
鳥人と呼ばれる存在、王国と呼ばれる場所のこと、一切が謎のままで、ただただ重厚かつ重苦しい雰囲気のままストーリーは進んでいきます。
それでも、作者様のセンスと謎があるからこそ読ませる筆力は確か。
そして巧みに選ばれた文章の一つ一つが美しい。
難解だからこそ、この作品は読む価値があると思います。
二回、三回と読んでいきたい気持ち、陰鬱だけれど映える美麗な描写表現は必見です。

★★★ Excellent!!!

終始一貫した重苦しい展開が、鮮烈な描写を伴う重厚な文章で綴られる短編作品。

正直なところ、作者の意図や狙いをどれだけ読み取れたのか自信がない。
前半部は、2周ほどしてもわかるようなわからないようなという感じだった。

それでも、4話で新たな登場人物が出て以降の展開は思わず身を乗り出してしまうものがあり、作者の筆もいっそう乗ってきたのであろうと感じられた。

結局、“鳥人”とは何だったのか。
まるで救いのない話なのに、悪いと言い切れない読後感を抱くのが不思議だった。
最後の一文には特に惹かれた。

★★★ Excellent!!!

登場人物の誰もが、抗えない状況に閉じ込められているお話です。その中で感情が昂り落ち窪んだ瞬間に治療が施され、まっさらな状態で新たに投入されていく。それはきっと、彼らが傷つきやつれて使い尽くされてしまうまで続いていくのでしょう。

穏やかな日々が誰にも許されていない、非情な世界をどうぞ。