第47話 魔獣の窟攻略の宴

その夜冒険者ギルドの食堂では、ギルド主催の「祝『魔獣の窟』攻略の宴」が開催された。


「ユウマくん、おめでとう!」

「クロちゃんかわいー!」

「肉美味しい」

「肉有難う、サイコー!」


ユウマは主役の席にチョコンと座って、隣にはどんぶりに酒をつがれて、べちゃべちゃ舐める様に酒を飲む、ブラックドッグのクロドが床に座っていた。


クロドの周りには女性冒険者達が集まり、撫で撫でモフモフしている。


「なんだか落ち着かないんだけど、こんな目立つ席はイヤだなぁ」

俺は隣に座るギルド長に囁く。


「何を言っとる、ダンジョン攻略者と言えば英雄だ。今後この様な機会も多かろう、慣れておきなさい」


酒を飲んで前後不覚で酔っ払って寝ちゃって、この前失敗したから、次々に酒を注ぎに来る冒険者を断って、「ちょっとトイレ」と言って抜け出した。


目立たない様に壁際をコソコソ進むが、後ろからクロドが付いて来た。


「どこに行くワン」


「いやぁ、あんな席に座って注目されながら、飲み食いしたく無いからね。それよりクロド、女性冒険者のモフモフ攻撃を、あっさり躱して来たね」


「ははは、儂は闇魔法を使うので、消える事が出来るのだワン」


クロドが影に消えた。


「何それ? 初耳だぞ。まあ良いか、消えたまま付いて来て」


「了解だワン」


影からクロドの声が聞こえた。


端の席で男達の声が聞こえた。


「なんか色々ありすぎて、ギルドに報告するのをすっかり忘れていたんだが、『焔の剣』の持っていた武器と荷物って、『水竜の爪』の物と似てるんだよなぁ」


「そう言えば、『水竜の爪』は戻って来ないなぁ」


「『水竜の爪』って堅実が売りのパーティーじゃないか。戻らないっておかしいよな」


別の男がまた1人加わる。


「おいおい、今の話本当か? 実は『太陽の獅子』も戻って来ないんだよ。そして『焔の剣』のヒマリが持ってた弓が、『太陽の獅子』のユメが持ってた弓に似てるんだ」


「え!もしかして・・・」


「もしかしたら、そうかも・・・」


「ギルド長に相談しよっか」


「ギルド長と直接話が出来る機会が、滅多に無いからなぁ」


「緊張するんだよなぁ」


「うんうん」


「まぁ酒も飲んでるし、今がチャンスかもよ、行ってみよう」


男達3人はギルド長の元に、歩いて行った。


「クロド、今の話って『焔の剣』が、『水竜の爪』と『太陽の獅子』を襲って、武器と荷物を奪ったって事だよね」


「そう取れる話だワン」


「そこまでするかなぁ? ただ奪ったんじゃなくて、殺して奪ったって事だよなぁ・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃の『焔の剣』達。


荷物を纏めて、都市を出ていたミナト達。


「これからどうするのよ?」

と弓使いのヒマリがミナトに聞く。


「決まってんだろ・・・」


「な、何よ」


「盗賊だぁ!」


「え!」

絶句のヒマリ。


「おいおい、今更抜けるのは無しだぜ」


「私は抜けるわよ。実家に帰るわ」

と回復士ユイナ。


「おいおい、それを許すとでも思ってるのか?」

剣に手をかけるミナト。


「馬鹿ねぇ。いざと言うときの隠れ家は必要でしょう。私の父は村長よ。屋敷に身を隠す事ぐらい出来るわよ。私を護衛して一旦村に戻ってよ」

とユイナの言葉に納得するミナト。


「む、それもそうだな」


「そうそう、一度村に戻りましょう」

と魔法使いのアオイも賛同し、ミナト達は村に向かった。


「国外追放なのに村に行って、大丈夫なのかなぁ」

と呟きながら付いて行くヒマリ。

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