第26話
「貴方の考えもなるほどですが、残念ながら、彼らは神なのですよ」
「随分下品で、傲慢勝手な神様だな」
「それはしかたがないのです、君たち人間が戯れで創りだした神なのですから」
「創造主は俺達、か」
創造主が人間だと彼らは初めから言っていたこと。だから別段驚きはしない。姉貴もその点を気にしていた。
「一つ聞いていいか?」
「どうぞ」
「連中は最近作られた存在なのか?」
「というと?」
「そもそも、神様という存在は神様や人間ではない誰かが作ったのではなく、人間が創りだしたものだ。それらしい物語を人間たちが作り、そして自分で作ったものを崇め奉った」
「さすがだね。貴方の言う通り人間というのはとても想像力豊かな生き物。神という存在を人間は崇拝しながらも、それを創りだしたのが人間であることを忘れている。そして面白いのが、忘れながらもまた神という存在を様々なものに利用し新たな神を創り出しているのだ」
「新たな神、そんなもの生み出していたか?」
「嫌だな、君だって見たことぐらいあるだろう。その妙な板状の機械の中に存在しているひどく装飾されてしまった原型をとどめていない神々を」
言われてなるほどと納得する。やたらと乱立しているソーシャルゲーム、そしてテレビゲーム、アニメ等の中に連中は居て、そして連中を生み出したのは人間だ。原型をとどめていないのは集客を考えれば当然だろう、原型のままでゲームを作っても人気がでるはずはない。
「彼らはそんな人間たちが創りだした様々な神様なのだよ。感じたことはなかったかい? 神様なんて言いながら、その行動はなんて人間臭いのだろうって」
「まぁ、確かにな。お前等は中学生かと突っ込みたくなるような行為ばかりだったからな」
連中の行動を、姉貴はわざとだといったが、俺にはどうしてもあれこそが連中の本性に思えて仕方がなかったが、俺の考えもあながち間違っても居なかったようだ。
「当然のことなのだよ、人間が創りだしたのだから、習慣も行動も人間のそれと同じようになる」
「仕方がないことか。それにしても連中は威厳すら無かったぞ。神様といえば威厳と尊厳の塊という気がするし、何より今のやり方は本当にソーシャルゲームでもやっているようで神の罰という感じがしない」
「それも仕方がないこと。彼らを作った人間の程度、そして、彼らを認識している連中の程度が関係しているからね。君の言う尊厳のある神様達はすでにその存在が薄くなりつつあるのだよ。君たち人間が初めて彼らを創りだした時からもう随分時が流れ、はじめに創りだした者達の意思はなくなって、名前や性質を受け継ぎつつ新しいものへと君たちは生まれ変わらせてしまった」
だからこそ、連中は軽薄に思えるのかと男の言葉に俺はひどく納得した。
神話とともに神は生まれた、だがその神話が出来上がった当初と今では神々の扱い方も多少違っている。おそらく特にこの日本では扱い方は素晴らしく多様性をもっているはずだ。
宗教というものの概念がほかの国とは違い、これだけの宗教が入り乱れている国も珍しいだろうし、宗教間の争いが人の生死にかかわるほどにならないことも珍しいだろう。
そんな中で扱われる神々は神話から飛び出し、様々な形で物語に登場させられている。漫画、小説、ゲーム、それらは娯楽が主体。当初の意味合いとも違ってきている神様だっていたはずだ。そう、人間は自らが生み出した崇拝すべき神様を自らの楽しみのために利用している。そして利用されればされるほど、神々は進化していくのだ。
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