10/1(木) 野中貴臣①

「運搬ありがとう、なっちゃんとノナカ!」

「いーえっ! 頑張ってね!」

「サンキュ! しかしなっちゃんはともかく、ノナカが真面目に働いてるのが不思議だ……」

「アラヤダ奥さん聞きました? アタシのカラダじゃ物足りないってことかしら?」

「お前のカラダは俺だけのものだって言ったろ? あ、んじゃ回収のときまた呼んで〜」

「う、うん。ありがとう……(急に素に戻るんだ!?)」



 野中の背中を押して、体育館を後にする。

 朝から運搬系の手伝いを二人で組んでやっていた。人をまとめるような仕事もあるけど、文化祭実行委員のやりたそうな顔している人に任せておいた。

 最高の天気の下で、力仕事はかなり体力を持って行かれる。休みなしだった俺たちは、さすがに休憩を挟むことにした。



「野中、ちょっと手が空いたし、飲み物でも買わん?」

「賛成〜!」

「人少なければいいんだけどな。屋上でのんびりする時間もないし」

「食堂は今人いないんじゃね」

「天才っ!!!」



 自販機で飲み物を買って食堂に入ると狙い通り、見事にスカスカだった。そして座ったとたん、二人とも机に突っ伏してしかばねる。



「ははは〜。野中、平気ー?」

「いや〜〜〜〜〜これは体力が有り余ると言われるDK男子高校生でも、HPゴリッゴリに削られるやつ!」



 でもさっきの子も言ってたけど、野中がこんな面倒なことを手伝ってくれてるのが嬉しい。なによりも、俺のやりたいことに協力してくれてるのがたまらなくこそばゆい。



「こっちは腕がパンパンマンだよ〜」

「わはは。それでも俺は、なっちゃんとの時間が増えてうれしいけど」

「あー、それ女子に言われたいやつな!」



 改めて、一緒にいてくれてありがとうな。



「でもお前こそ、ここ最近ずっと帰り遅かったみたいだけど大丈夫か?」



 野中がのそりと起き上がった。俺は表情を見られないように、机に頭をつけたまま別方向を向く。



「ちゃんと寝てるし大丈夫よ〜」

「体調は?」

「平気平気〜。ありがとう」



 正直、ここ数日ヤバいときが何度かあった。夜もベッドに倒れこみ、即寝てしまうことも多い。

 でもあと2日だけなんだ。なんとか体に頑張ってもらわないと。

 俺、この日のために学校来ていたから、ここでダウンしたら死んでも死に切れんし、マジで世の中を呪ってやる。



「そういえば、音和の演劇は観に行ってやらんの?」

「今日はまだヘルプで呼ばれるだろうし、明日行こうぜ〜」

「あいつ演技とかできるのかよ」

「寝てるだけだって」

「は? どんな劇!?」



 白雪姫っす。

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