9/23(水) 部田凛々子②
「あの! 失礼します」
扉を開けて入った来たのは、今度は女の子だった。
「予算は絶対よ。諦めてもらえる?」
「え、予算??」
「……その用事では?」
「あ、はい。あのわたしたち朝陽高生でご当地アイドルをやってるんですけど、今度有志のステージにも出場するんですが……」
と、最初に入ってきた女子の後ろにぞろぞろと3人くっついて来た。みな一様に不安そうにしている。俺も立ち上がって、彼女たちを迎え入れた。
「どうしたんですか? どうぞ座ってください」
「いえ、すぐに帰るので……。あの、最近変なことが続いていて」
最初に入ってきたリーダー格の子が少しだけ語気を強めた。他の子たちはその言葉のあと、わっと泣き出す始末。
「え、なななな何があったんですか??」
女の子たちが泣く姿に慌てふためくだけで、役に立たない俺だった。
「最近急にファンから電話がかかってきたり、個人メッセが来たりして……。どこからか個人情報が漏れてる可能性があるから、マネージャーからも漏洩場所を特定しろって言われてて。いちおうここにも聞きにきたんです」
「それは怖いわね。うちではそういったものは室内から持ち出さないようにはしているけど」
凛々姉が立ち上がり、ごそごそと棚を探し始めた。そして大きなファイルを取り出す。
「普段、個人のプリントはこれに入れてるんだけど……変ね」
「ん? どしたの」
答えず、ファイルを机の上に起き、パラパラとめくる。そして手が止まった。大量のプリントが続く途中、何も入ってないページに違和感を持つ。
「……抜けてる」
「キャーーーーーー!」
「やだこわいーーーー!!!」
女の子たちも悲鳴を上げ、錯乱し始めた。
「ちょっと、『抜けてる』じゃないと思います! わたしたち信頼して出してるんですけど!」
リーダー格が涙目で凛々姉に詰め寄る。凛々姉はファイルを再度確かめて、
「ごめんなさい。確かにあなたたちの提出物が紛失してる……。一体どういうことなの。鍵はあたししか持っていないはずなのに。最後に触ったのはチュン太?」
「いや、音和だけど、人に興味ないあいつが抜くとか考えられないし」
やばい、これじゃ虎蛇の信用がっ!
「あの! ここの鍵、会長と職員室ので2本しかないんです。俺たちがいるときの人の出入りも把握しているし、誰か来ても資料には触らせたことがない。誰かが職員室で鍵を持ち出したとしか考えられなくて……。本当にすみません! 持ち出し記録調べて連絡します」
「……それでお願いします。報告はしてくださいね!」
今にも怒り出しそうなアイドルさんたちを帰すと、すぐに凛々姉に断って、俺は職員室へと走った。
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