9/11(金) 部田凛々子②
「さて凛々子、いつ生徒会に来るのかしら。待てなくてご足労しちゃったわよ? っていうかこの部屋暑いわね!!」
「あら、エアコンを買ってくれる話? 生徒会室はいいわよね、2台もあって」
生徒会長とその側近2人が虎蛇に乗り込んできたのはついさっきのこと。なっちゃんとほづみん、追いかけるようにいっちーが出て行ってすぐだった。
生徒会長は虎蛇のパイプ椅子に小さな足をかけ、横柄に振舞っている。あたし、芦屋七瀬はいつもの窓際の机からそれを眺めた。
「まあまあ、生徒会長さん。そんなところにおみ足を乗せられずに、こちらにおかけになってください。お茶はいかがですか? 優雅にいきましょうね♡」
「……いただくわ。でもすぐに帰るからここで」
詩織先輩が優しく生徒会長の女というプライドに攻撃をして、生徒会長は大人しく足を下ろした。先輩って大人しいように見えるけど、あたしなんかよりよっぽど肝座ってるなー。
「で? 今日までに提出するっていう出し物の書類はどこ?」
部屋にはあたしとしおりん先輩、そんで会長しかいない。そんで出し物のプリントもどこにも見当たらない。この状況を見たら誰でも分かると思う、提出物が揃っていないこと。
だから勝ち誇った顔で、生徒会長は腕組みをしてるんだ。まじだるい。
「せっかちね、いの。まだ今日は終わってはいないのよ」
会長は生徒会長を見もせず、何か書類に目を通してる。
「早めに用意するのが常識でしょう?」
「あら。貴女が先日、課題を遅れて職員室に出しに行くのを見たものだから、そこまで提出物の時間にこまかく執着するとは思っていなかったわ」
「あん!!たっ!!てー!! そーやってあたしのこと付け回してるの!? 文化祭実行委員さんってとっても陰湿なのね。きーーーーー!!」
「生徒会長、落ち着いてください」
うは、ざまー。止められてやんの。
「まさか、偶然よ。ここ職員室の隣の部屋でしょう。いろいろ見えてしまうだけ。あたしたちはヒマじゃないの。こうやってよその委員会室に遊びにくるような生徒会とは違うので」
バンッ!!とわざと乱暴に、会長は書類を机の上で揃えた。生徒会長は大きな音に驚き、一瞬ひるんだ。
「生徒会長さんたち、お茶が入りました」
「いらないわそんな粗茶! 帰るわよ、八代、鈴見!」
「「はい」」
はい、おつでーす。
「いの」
「なによ!」
「粗茶っていうのは、出すほうがへりくだっていう言葉よ」
「うるさい!!!!」
大きな音を立ててドアが閉まった。
「……これでとうぶん来ないでしょ」
会長はふうっとため息をついて、自分の仕事の続きに戻っていた。
生徒会長が出てすぐにドアのノックが響く。
「うえ、戻って来た」
「な、七瀬さんっ」
あっ、ホンネがぽろり出ちゃった。っていうしおりん先輩だって、ちょっと笑いそうになってない?
「大変ー! ただいまーー!!」
でも、入ってきたのは生徒会長じゃなかった。そういえばいっちー、どっか行ってたな?
「日野? どうした、何していたの?」
会長が不思議そうな顔を向ける。
「消えた書類を探そうと思って! で、その謎の解明に有力な人物を見つけてしまいました!!」
「えーーーー!! なにそれいっちー、マジでお手柄じゃん!!」
立ち上がってドアに駆け寄ると、いっちーの後ろにその有力な人物とやらがいた。
「この人ー?」
「こんにちは、1年の平澤っていいます。今週、掃除係で……」
その男子は手に持っていた袋をおずおずと掲げた。
「ゴミステーションを担当しているんですけど、これって文化祭実行委員さんに必要なんじゃないかなって……」
「あっ」
思わず声を上げてしまう。
だってそれ、今日紛失したアンケートだよ。なんで!?
「えっ、どういうこと? 誰が捨てたの? これってガチでヤバくない?」
会長はポーカーフェイスを崩さなかった。ただ、
「ちょっとキミ、話を聞いても?」
持ってきてくれた男の子がちょっぴり怖がるくらいに冷静な声だった。
ひえー、絶対怒ってるよこれーーー。
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