8/13(木) 月見里 蛍③
「アタシが第一発見者で。救出して一生懸命、月見里に声をかけたのよ。そしたら彼女、一瞬だけ目を覚ました……」
月見里! 月見里!!
……あ。せん、せ……。
これから手術するから、大丈夫だから、ね!?
しゅじゅつ……?
だから! 絶対諦めるな!!
しゅじゅ……つ。わたしがうけたら、たかなしくんも、こわがらずに……うけてくれる……かな。
絶対受けさせるから!
美原先生、そこどいてください! けが人意識わずかに有り。ストレッチャーに乗せるぞ、おいっ!
せーのっ!
月見さ……
……ほーたーるの ひーかーあり。
!?
まーどーの、ゆーうーきー。
や、やめて……
ふんふーふふ、ふんふーふふ。
だって、その歌は……。
ふんふーふふーふーふー。
やだ、終わりの歌じゃない……。
せんせ、わたしね。
こんなからだで、びょうきなのにね。
ふふ、かれしがいたの。
せかいいち、すてきな人なの。
しあわせすぎるね。
しんじゃっても、しかたないね。
小鳥遊が戻ってくるまで待って!
まだ早い、だめよ!!
あと少しで、帰ってくるんだから!
だから、月見里。お願い。
…………いかないで!!!
「……ストレッチャーであの子、歌ってた。苦しいはずなのに、そんなそぶりも見せずに、安らかな顔で、蛍の光を、歌ってたの」
背中に回された腕の力が痛い。美原さんの肩や背中が、こんなにも小さかったことを初めて知った。
「それがあの子との最後の会話だった。自分のことより、あんたを心配してたのよ」
「ほたるは……」
聞くのが怖い……。でも、聞いておかないと、ほたると出会ったこと、そして話したことが、全部、上辺になってしまうから。
「……ほたるは、最期、ひ……ひとりぼっちじゃ、なかったよね……?」
涙があふれるのが抑えられない。
それは美原さんも同じだったらしく、嗚咽をこぼしながら、
「バカ。アタシや医者、あんたの元相部屋の人たち、看護師、みんながいたわよ。あの子に寂しい思いなんかさせるわけないでしょ?」
なんだよ、約束を守れなかったのは、俺だけじゃん。
でもよかった。やっぱり、お前のまわりには人があふれていたな。
「美原さん……ありがとう」
「…………うん」
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