7/19(日) 葛西詩織⑥
┛┛┛
「シャワー終わったよー! って、海くさっ!!」
後ろから首に飛びついてきた音和を引きはがす。
「お前らを待ってたんだろうが」
「早くシャワーして! その間にみんなでごはん作ってるね」
「おお、ありがと」
重い腰を上げると、音和はにっこりと笑顔を見せた。
「たかおみも探してくる!」
「じゃあ先行ってるって伝えといて」
親指を立てると、音和は先に走って戻った。
あいつ普通だったけど、葛西先輩とは会わなかったのか? 俺、変じゃなかったかな。
……ふう。
ゆっくり戻ると、玄関先にしゃがんでダンボール箱に入っている野菜を選ぶ人影があった。
「よー」
「あ!」
俺に気づいたいちごは、うれしそうにサンダルで駆け寄ってきた。髪の毛を頭のてっぺんでお団子にまとめ、タンクトップと短パン姿のラフな格好をしていて、正直目のやり場に困る……。
「知実くん!! ヤバい! 今日すごく楽しい! 私、大人数でお風呂なんて初めてだった! みんなすごいの!!」
「落ち着けって」
「うん!!」
「それでどうすごかったんだ。詳細を」
「会長なんてもう大人って感じだし、七瀬ちゃんは超スマートだし、音和ちゃん意外と胸あるんだよ!! あ、それは知ってるよね!」
「聞いといてごめんだけど、なんで俺が音和のボディ事情に詳しいことになってんだよ!」
「一緒にお風呂入ってたって」
「過去形な過去形!! ガキの頃の話だっつーの!!」
えっこれ他のメンバーには変な誤解生まれてないよな? いちごの天然発言だよな!?(泣)
「あたしは……みんなに身体べたべた触られちゃって。なにか変なのかな??」
「いや、変じゃないと思イマスヨ」
それを純粋な目で俺に聞かないでください。
「あっ、知実くんこれからシャワーだよね。今日はカレーだよ! お泊まりといえばカレーなんだって!」
いちごの笑顔につられて、脱力して笑ってしまう。この子も知らなかった
「確かに鉄板だな。んじゃ、さっさと風呂入ってくるよ。さっきのお返しに、野中のボディ事情も教えてあげるね」
「うん! いらない!!」
いちごと話してると気が抜ける。でも、こういうときにはありがたい存在だ。
┛┛┛
晩飯に先輩は現れなかった。俺が風呂に入っている間、体調を崩したと言って二階に閉じこもってしまったらしい。
先輩にとっても楽しい思い出になるはずの合宿のご飯を、一緒にできなかったのが悲しかった。罪悪感がハンパない。これ100%俺のせいだし。
飯が終わると、凛々姉が先輩の様子を見に行った。片付けは俺と野中が担当することにした。結局、風呂のおかげで料理は女子にまかせてしまったので、片付けくらいはさせてくださいと志願したのだ(もちろん野中の尻を叩いたのは俺だ)。
キッチンに立っていると、いちごと音和、七瀬がリビングできゃっきゃと話している声が聞こえてくる。
「海もお風呂も楽しかった〜」
「みんなでお風呂っていうのいいね!」
「ふふーん、いっちーはけしからんボディしてたな〜」
「もー触りすぎだよー。七瀬ちゃんだって筋トレしてるんじゃないの?」
「実は体育祭のあとからジム行き始めたんだー。夏だし!」
「あたしなにもしてない」
「ほづみん。あんたのはそれでいいの。唯一無二のカラダしとるわ」
立ち位置のおかげで、女子がじゃれあうのを堂々と眺められる。最高。皿洗い、立候補してよかった!
「くそ、俺も混ざりたい」
お? 野中が女の子の輪に興味を示すとか、意外だな。
「野中よ正気になれ。お前は今まで女に優しくされて生きてきたかもしれんが、虎蛇ではそのルールは効かんぞ。ここで聞いてるくらいがちょうどいいんだよ」
「混ざって、バチボコにけなしてまわりたい」
「お前、クソ性格悪いな……」
「なぜなら、俺のボディを見ろ! ハリツヤコシ、すべてにおいてオール5だから!」
「脱ぐな! 張り合おうとすな! つかコシってなんだ、コシって!」
キッチンでシャツをはだけてうぜ〜〜! なんなの! こいつバカァ!?
「あー、男子がこっち見てるんだけどー! エッチー!」
げ。七瀬と目が合った。って、一斉にこっち見んな!
「あ、おい野中、ホラお前言いたいことあるんだろ!」
「知ちゃんだけじゃん」
「えっ、ハッ!?」
はだけていたはずの野中はいつの間にかシャツを着て、背中を向けて食器をしまっていた。
「男子がエッチなのは仕方ないよー、あはは」
「違っ、仕方なくない! 頼むからいちごだけは、苦笑なんてしないでーー!」
なにこれ。メンバーの親睦を深める合宿のはずだろ? 俺、マイナスイメージしかついてなくない!?
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