6/26(金) 葛西詩織②
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「あのお。そろそろ閉めていいですかー?」
外が明るいからわからなかったけど、申し訳なさそうな図書委員の声で、あれから結構な時間、勉強していたことに気づいた。
慌てて荷物をまとめて図書室を出た。勉強はかなりはかどった。俺が音和に教えていたやり方が、どれだけ幼稚だったか知らされた時間でもあった……。
先輩は丁寧にわかりやすく教えてくれた上、凡ミスしやすいポイントもキッチリとおさえてくれた。才女様は俺とは別次元に生きておられるのではないかと、あらためて自覚させられましたよ……。
でも、終わってから世間話は全くなし。校内で肩を並べて歩いているのに、問いかけても気のない返事しか返ってこない状況で、俺も話しかけるのを諦めた。
靴箱でいったん別れ、出口で先輩と合流する。
「では、明日は街の図書館でいいですか?」
先輩がはっきりそう言って、驚いて足を止めた。
「えっ、いいんですか?」
「もちろんです」
「えっと、俺、今度こそ嫌われたのかと思ったから……」
「そんなことないですよ」
「よかったー」
「私が教えるのですから、100点を取っていただきたいですし」
「はっはーまたまた、おもしろい冗談ですね!」
「?」
えっ。目がマジ……だと?
「ちなみにつかぬことをお聞きしますが、先輩のテストはいつも、平均どれくらいなんですか?」
「100点以外はありませんよ?」
知らない間にプレッシャーがのしかかっていた。
でも、高校で100点を取ったっていう思い出を作ってみるのもいいかもしれない。
それに先輩ともっと長くいれば、先輩に対してずっともやもや感じていることの答えもわかるかもしれない。
あとヨコシマな気持ちだけじゃなくて、今年が高校生活最後である先輩の夏の思い出作りに協力したい。
いや、絶対やり遂げてみせる。
よっしゃ、見てろよ五百蔵鹿之助!!
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