第328話 興味深い噂話し



 ――ある日。

 とある者たちの元に舞い込んできた興味深い噂話。


 ありとあらゆる物を一撃で破壊し、ありとあらゆる者を死地に送るプレイヤーがいるらしい。

 その者は日本やアメリカと言った先進国で今人気のゲームに出没するらしい。

 若者達の多くがそのゲームに没頭し、今では売り上げランキング上位までになったゲーム。

 かつてのヒット作『World phantom』を凌駕し、近いうちに賞金を懸けた大会もおこなれるのではないか、とプロゲーマーたちの中でも囁かれるゲームである噂が一人立ちししていた。


 その噂を一言で形容するなら――こうだ。


 つい先日【異次元の神災者】となった――


 『最恐プレイヤー伝説』もしくは『神眼の神災伝説』。


 たった一言。

 たった一文。

 これだけ。

 でもそれだけで。

 インターネット上では数百とは言わない、数千、もしかしたら数万と言った検索結果が出てくるのだ。たった一つのゲームしかしてない身でなりながら、プロより目立ち、かつて『World phantom』で結果を残した者達と対等に渡り合うその者はまさに異常。


 時に物理学。

 時に度胸。

 時に意味不明。

 時に予測不可能。


 を武器に純粋なPS(プレイヤースキル)の差を埋め、空を飛べないから空を飛び、燃やせないから地上を焼き野原にし、それでも倒せないならと――普通のプレイヤーとは常軌を逸脱した存在。



「聞いたか?」


「何を?」


「たった一人のプレイヤーの為に大幅なサーバー強化をしたゲームが今日本で大流行しているらしいぞ。そのゲームの名は××××」


 その言葉に一人の女は心当たりがあった。

 どこかで聞いたことがある名前。

 どこだっけ……そう考えていると、ある答えが脳裏に出てきた。

 そうだ、娘たちが今楽しんでいるゲームではないかと。


「それで?」


 だからすぐに興味を持った。


「二、三年前ぐらいだったかな? 『World phantom』の中等部世界大会で活躍した子供達がそこに集まっているらしい。それでも――」


 ある者は緊張しているのか、持っていたペットボトルのキャップを外して水を一口含んでから言葉を続ける。


「たった一人の初心者プレイヤーに勝てないらしい……」


 女はその言葉に耳を疑った。

 男が言った。「二、三年前ぐらいだったかな? 『World phantom』の中等部クラス」と言えば娘とは別に娘と特に仲が良い美紀と言う女の子もいる世代。娘もだが、美紀も中等部の部門で上位入賞し、過去に賞金を何度も受け取った程の天才ゲームプレイヤー。そんな娘達と対等な女の子がいる世代に更にもう一人それに勝るとも劣らないプレイヤーが姿を見せるとは信じがたかった。


 中学生にして年収数百万。

 それは別に不思議ではない。

 世界で大流行していたゲームで結果を残せば――。


「俺も興味本心で見てみたんだが一言で言うならその初心者プレイヤーは異常だった」


「……い、じょう?」


「あぁ。例えば……そうだな」


 ある者は具体的に何がいいかな、と考える素振りを見せてから、


「普通火が通らない相手ならそれ以外の方法を使うよな?」


 と、言った。


「えぇ、当然。それが定石」


「だけどそいつは違った。火が効かないなら火を進化させ、自分が勝てないなら敵と共闘し、複数の敵に自分一人だけでは勝てないなら増殖し、と本質はあくまで単純。対策や対抗手段に対してあくまで正面から突破していた」


 その言葉にある女は、ふとっ、愛する娘達から聞いた言葉を思い出した。


 ――しんがん……の……しんさい。




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