第289話 【神眼の神災】VSゴッドフェニックス 後編
その時だった。
ゴッドフェニックスの全身が更に燃え、急な方向転換と同時に急降下を始めた。
蓮見の目は見開かれた。
「やべぇ……」
追跡を撒けないと判断したゴッドフェニックスが自身のネームであるスキル『ゴッドフェニックス』必殺技を使い蓮見に向かって突撃してきたのだ。
速度は見ただけで分かる。
「あれは俺より速い」
慌てて岩陰を利用して今度は全速力で逃げるも、どうやらスキル『ゴッドフェニックス』にも追尾性能があるらしい。
どんなに蓮見が上手く逃げてもゴッドフェニックスが追跡してくる。
それも大きな岩を全部焼き払ってとかなりの高威力だと見せつけながら。
このままでは後数秒もしたら追いつかれる。
そう判断した蓮見は賭けにでる。
「来い! 俺様戦闘機『猛毒の捌き』!」
それからすぐに自分も空へと逃げ、猛毒の矢の上に乗りながらも足場に使っていない猛毒の矢を使い反撃を開始する。
まず蓮見が狙ったのはテクニカルヒットポイントとなっている大きな羽――両翼。
Killヒットポイントである頭部は小さく狙いにくいがテクニカルヒットポイントは大きな羽の中心部で黄色い点が頭部の赤い点の倍以上大きく狙いやすい。
猛毒の矢が一直線にゴッドフェニックス迎撃に向かい飛んでいく。
そしてすぐに両翼をピンポイントで貫通した。
――ッ!?
と思われた。だけどダメージが減る所か当たった形跡すらない。
「一体なにが……起きたんだ?」
もう一度攻撃して今度は逃げながらも猛毒の矢の行方にも神経を集中させる蓮見。
ようやくさっきの攻撃が通らなかったのか理由がわかった。
「途中であの炎に燃やされている……のか。どんだけ熱い……炎……なんだよ」
蓮見はスキルによる火属性ダメージ無効化と日頃の行いにより自発的な熱風耐性がある程度ある為、そこまで気にしなかったが、猛毒の矢は別だ。ゴッドフェニックスに近づく度に炎ダメージを常時受け矢がゴッドフェニックスの身体を貫く時にはHPがゼロになり消滅し燃やされているように見えていた。それだけあの炎自体に触れなくても相手にダメージを与える効果(熱さ)があるというわけである。
「てめぇ、それはズルいぞ!!! せいせい堂々戦え!!!」
ご立腹の蓮見。
これでは生半可な攻撃は全て無効化されてしまう。
今回は個人で戦うボスではなく、集団それも一ギルドを超える人数でシミュレーションされているため、特にレイドボスはかなり強めに設定されていたり、スキル一つ一つがかなり強力だったりと挑戦者を苦しめるように作られていた。
「ウォォォォォ!!!」
対して、逃げ続ける蓮見に対してご立腹の様子のゴッドフェニックス。
「こうなったら真向勝負だ!」
方向転換をしてゴッドフェニックスに突撃する蓮見。
ここは賭けに出る事にした。
このままではどの道綾香達が追いついてくる。
そうなるとポイントを山分けすることは必然。
そうなるとPS(プレイヤースキル)が周りと比べ劣る蓮見ではかなり分が悪くなる。
そうならない為にもここで一回はゴッドフェニックスを倒しポイントを総取りするか、少なくとも多くのダメージを与えておきたい。
「俺様戦闘機、全弾ゴッドフェニックスの頭に飛んでいけ!!!」
蓮見の声に反応するようにして、全ての猛毒の矢が蓮見を乗せたまま飛んでいく。
ゴッドフェニックスがそれに対抗して火を吐きながら突撃してくるが、蓮見の『虚像の矢』が無効化する。
単調な攻撃かつ速度が遅ければ今の蓮見なら余裕で敵の攻撃をKillヒットで無効化できる程度にはこの日の為に成長してきたのだ。
二つの炎が衝突し消えた直後――今度は蓮見とゴッドフェニックスが衝突する。
眩しい光が発生し炎が周囲の空気を燃やすようにして燃えた。
それは打ち上げ花火のように美しい。
だけど直視すれば閃光弾にも負けないぐらいに炎が激しく空中で燃えているだけ。
数秒後。
眩しい光が落ち着くと、上空から二つの塊が地上へと灰色の煙をあげながら落ちていく。
壕(ごう)! という風の唸りと共にゴッドフェニックスが炎を振り払い蘇る。
これがゴッドフェニックス――不死鳥の血を引く『演舞の煙山』の支配者の力。
他のレイドボスとは違い倒されHP消滅と同時に完全回復して復活。
それは挑戦者達に休む暇を与えず、回復の時間も無駄に与えない。
ボスの名にふさわしい回復力とも呼べる。
だけどもう一つの塊も蘇る。
「まだまだ!」
目を見開き空中で弓を構え放つ蓮見。
自動発動スキル『白鱗の絶対防御』が発動しVIXを十パーセントアップし、HPを一にして耐えたのだ。
半不死の蓮見。
ただしこれは致死性の攻撃を受けた時の十パーセントでしか発動はしない。
だけどこうゆう時の蓮見は誰よりも悪運が強い。
放った矢は躱され空を切り明後日の方向へと飛んでいき、不死鳥は新たな挑戦者を確認すると一旦天高く飛び態勢を整える。
それとは対照的に蓮見は地面に重力落下し「いてぇぇぇぇぇ!!!」と足の裏から伝わる衝撃を全身で受け止め苦しみながら立ち上がる。
「……くそぉ。てか忘れてた……これでもダメージ受けるの……。二回連続『白鱗の絶対防御』今日は強運だな」
「それは強運じゃなくて悪運だと思うけど、ここからは私達も加勢するから。とは言ってもここからは一方的な蹂躙だけどね」
後方から楽しそうな声が聞こえてきた蓮見が振り返るとそこには綾香達がいた。
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