第288話 【神眼の神災】VSゴッドフェニックス 前編


 青く広大な大空を優雅に飛び回るゴッドフェニックスの縄張りに蓮見が行くと、大きな羽をゆっくりと動かしながら地面へと降りてくる。

 燃える大きな翼が動く度に熱風が蓮見を襲う。

 だが熱風など日常茶飯事の蓮見にとってはちょっと息苦しいかなぐらいなものである。

 本来なら近接攻撃をする為に近づいてきたプレイヤーの呼吸を奪うような熱さを持っている。その為、今みたくある程度距離を置いて向かい合っても息苦しくなるのが普通で蓮見が異常なのである。


「おっ! ボス発見だな」


 視界に敵のHPゲージとMPゲージが出現する。

 それと同時にレイドボス戦開始五秒前と言う文字を見て、心を落ち着ける為に蓮見は一度大きく深呼吸をして息を整える。


 ―― 五。


 数字のカウントダウンが始まる。


 ―― 四。


 いよいよ待ちに待ったレイドボス戦。

 ここで少しでもダメージを多く与えてポイントを稼いでおきたいところ。

 時間をかければ後方にいる綾香達に追いつかれる。

 それを頭の片隅に入れ、首を鳴らし、軽くストレッチ。


 ―― 三。


 両者の瞳にはお互いの姿がしっかりと映っている。


 ―― 二。


 午後は今まで勝手にライバル視していた小百合との勝負も控えている。

 こんな所で負けるわけにはいかない。


 ―― 一。


 真剣な眼差しと表情になった蓮見。


 ―― 零。


 レイドボス戦開始だ。



 カウントがゼロになると同時に蓮見が弓を構えながら走る。

 フィールドは大きな岩石がチラホラとあり、かなり広い。

 ただし上空からは丸見えと、空からの攻撃には気を付けないといけない。

 蓮見がゴッドフェニックスに向かって近づいて行くと、大きな羽を動かして竜巻を起こしてくる。


 岩でできた地面を削り荒々しい音を鳴らしながら襲い掛かる竜巻。


「スキル『虚像の発火』!」


 一撃でも喰らえば死は免れない。

 だけど喰らわなければどうってことない。

 そんな考えの元、放たれた矢は竜巻の中心地に吸い込まれるようにして飛んでいき、竜巻をKillヒットで消滅させる。


 それを見たゴッドフェニックスはすぐに追撃を警戒し上空へと飛び立つ。


 蓮見は地上から通常攻撃として動き回りながら矢を何本か放つが全部躱されてしまう。


「MPケチって通常攻撃だとやっぱりパワー以前にスピードがなさすぎるか」


 舌打ちをしながらも冷静に状況を分析する蓮見。

 まずはゴッドフェニックスの動きと攻撃をパターンがある程度わかるまで無茶はせずに相手を観察していく。


「ここにきて里美達の鬼の修行の成果が出るとは、流石は鬼教官三姉妹」


 本人達の前では絶対に言えない本音を呟きながらも、ゴッドフェニックスが口から吐いた炎を岩陰に身を隠し対処していく。

 前回のミニイベントから基礎的な知識と基礎的な戦い方は格段に成長した蓮見はゴッドフェニックスの攻撃が途切れたタイミングで岩陰から出て反撃に移る。


「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」


 空に身を隠す場所はない。

 だが、地上からでもわかる大空には障害物が一切ない。

 ましてや地上では難しい高低差もありと、大きな羽を持つゴッドフェニックスは蓮見の五本の矢を簡単に躱してしまう。

 百人以上一緒に戦っても広く感じるであろうフィールドはなにも地上だけが広いのではなく、その分空中にも広い。

 その為多人数においても地上と空中ではゴッドフェニックスのように地上と上空からの攻撃を持ち更には大きな羽で素早く移動できるゴッドフェニックスの方が有利になるように作られていた。


「っち、一瞬で射程圏外に行きやかがった……」


 空を飛び、蓮見の矢が届かない場所。

 だけどゴッドフェニックスが大きな羽から放つ燃える羽による攻撃は届く。

 これでは岩陰に身を隠している間に防戦一方になってしまう。

 そこで蓮見は一度弓を腰に掛けて、全力で走ってゴッドフェニックスを追いかける事にした。


「行くぜ! 俺の全力シリーズ! 全力で全速ダッシュ!!!!」


 全プレイヤーで最速の蓮見はゴッドフェニックスの高速移動について行く。

 飛んでくる燃える羽の連続攻撃を軽い身のこなしで躱しながら全速力を維持して追跡する蓮見。


 そんな蓮見の耳にある音が聞こえてきた。

 その音に蓮見の脳がもう時間がないと判断する。


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