第241話 三色の眼


 アルティメットが着地すると同時に七瀬が動く。


 先手必勝。


「覚悟!」


 システムアシストによってスイレンの素早い動きが捕捉され七瀬の視界に敵座標が表示され、茶色の髪が赤色に染まり、ゆらゆらと燃え始める。


 だがそれと同時にアルティメットが巨体でありながら低空飛行で五人に向かって突撃してくる。


 蓮見が矢を放つ。


「うそだろ!?」


「弾かれた!?」


「お姉ちゃん、アイツ最初から障壁を展開してるよ!?」


「ミズナ!?」


 仲間の声を無視し、限界まで引き付ける七瀬。

 近距離で当てた方がダメージ計算は多い。

 失敗すれば当然その分ダメージを受けるが、こう言った手の敵の時は弱腰になった方が危険なのを過去の経験から七瀬は知っていた。


 それから数秒で魔法陣が消え、今度は杖が赤い色に染まり強い光を放ち始める。

 両者の距離が縮まる。


「紅! 私達は一回距離を取るわよ。でないとミズナの巻き沿いを喰らう」


「わかった」


 蓮見が頷く。

 すると一足先に美紀、瑠香が距離を取り始めていて、それに続くようにしてエリカも動いていた。


「って皆はや!?」


 慌てて蓮見も安全区域まで全力で逃げる。


「スキル『爆焔:炎帝の業火』(ばくえん:えんていのごうか)!」


 七瀬の杖から放たれた燃え盛る炎がアルティメットを容赦なく襲う。

 だが障壁だけでその攻撃を受け止め、巨体を七瀬にぶつけてくる。


「ミズナ!?」


 いち早く気付いた美紀がアルティメットの追撃を止めにかかる。


「スキル『破滅のボルグ』!」


 槍が黒味のかかった暗くも白いエフェクトを放ち始める。

 美紀が投擲の構えを取り、全力で投げる。

 それと同時に短刀白雪を腰から抜き、近づく。

 美紀は集中しており、最初から全力。


「さぁ、どうする?」


 美紀が大きくジャンプしアルティメットの上空から落下エネルギーを利用し攻撃を仕掛ける。


「ウォォォォォ!!!」


 アルティメットは雄たけびをあげ、三つ首の眼光を光らせる。

 すると美紀の槍がスキル効果を失い、空中で失速し地面に落下。

 予想外の光景に驚く美紀。

 その僅かな隙を見抜いたアルティメットの首の一つが小柄な女の子の身体を容赦なく頭突きで吹き飛ばす。


「キャァぁァァァ!?」


「里美!」


「大丈夫! それよりアイツ何かある。気を付けて!」


 蓮見が慌てて美紀の身体を受けとめる。

 それにしても軽いはずの美紀を受け止めただけで、後方に数メートル吹き飛ばされた。

 やはり敵の一撃が重たいと実感する二人。


 美紀と七瀬は熱くなりながらも早くも分析に頭を使い始めていた。


 本気の七瀬の攻撃を真正面から受け止める防御力があるのになぜ美紀の攻撃は無力化したのか。

 そこに違和感を早くも覚えていた。


「お姉ちゃんの仇!」


 勝手に七瀬が死んだような事を言う瑠香。


「まだ私生きてるからね!」


 七瀬の声を無視する、瑠香。


「絶対に許さない!」


「お姉ちゃん生きてるから!」


「スキル『水龍』!」


 魔法陣が出現し、そこから水龍が出現すると同時にアルティメットに向かって突撃していく。


「まだまだ、スキル『ペインムーブ』!」


 三つ首を起用に使い、正面、右斜め、左斜め、から突撃してくるアルティメットの攻撃をぎりぎりまで引き付けて躱す瑠香。

 そしてレイピアの射程にその巨体を捉える。


 瑠香の六連撃がアルティメットを襲う。


「もういっちょ! スキル『睡蓮の花』!」


 全てのMPを使い切る。

 水龍は残念ながら障壁が防がれてしまうが、瑠香の近距離攻撃は全てヒットしダメージを与えることに成功する。

 そのまま大急ぎで瑠香が逃げる。


 その間蓮見が『連続射撃3』と『虚像の発火』を使い瑠香が回復するまでの間の囮になる。


「里美さん」


「わかってる。アイツは多分遠距離攻撃に対しては障壁を使える。そして間違いない」


「里美も気付いたみたいね。アイツのあの目の色の属性しか効かないみたいね」


 これは七瀬の『爆焔:炎帝の業火』、美紀の『破滅のボルグ』、瑠香の『水龍』に対する行動パターンから二人は早くも答えを導きだしていた。

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