第235話 悲報


 ――イベント終わりまで後十五分。

 各々が気合いを入れて最後の挽回を込めて戦っているなか、蓮見の目の前に現れた少女達。


「誰がキノコ雲作るまでに技を強化しているのよ……」


「それにしても遠くにいた私達ですら目と耳が少しやられたんだけど一体何をしたのよ」


「そうですよ。てか周りのビルまで一部吹き飛ぶような攻撃をしてよく生き残ってますね……」


 苦笑いの三人に対して蓮見はこれは本格的にヤバイと判断する。

 今のでイベント前にエリカに頼んで貰う事が出来たアイテムは殆ど使いきってしまった。今からもう一度水爆を起こそうにも同じ規模では物理的に不可能となっている。


「なるほどねー。さっきのは紅だっただねー。よくもまぁ私の耳をやってくれたね」


「全くだ。油断していたとは言えまさか両目とも支障をきたされるとはな」


 さらに増えて行く人間に蓮見はとうとう苦笑いをしてしまう。

 まさか自分が起こした現象が引き金となり、美紀達だけでなく綾香達までここに呼び寄せてしまうことになるとはなんとも運がないと言えよう。


「まさか別動隊の部下をこのような方法で倒すとは……正直驚いた」


「それにしてもさっきの爆発はこれだったんですね……。私キノコ雲初めて見ました」


 そしてルフランと【ラグナロク】の幹部が一人。

 まるでミニイベントの災いの元凶にしてラスボスを倒す為に招集されたトッププレイヤー達が正面及び左右から蓮見を囲むようにして現れるとは……。

 となると後は後方しか逃げ道がないわけだが……。


「なるほどな。相変わらず規格外のやつだ。久しぶりだな【神眼の天災】」


「ちょっとは限度を考えて行動して欲しいのものだわ。おかげで右目がほとんど見えなくなったし耳も上手く聞こえない……もう最悪……」


 そんな後方からは【灰燼の焔】ギルドのギルド長と幹部の一人、リュークとスイレンがやって来てしまった。

 まさか自分が引き起こした現象がここまで運悪く近くにいたトッププレイヤー全員の怒りを買ってしまうことになるとは正直考えてもいなかったと絶賛後悔中の蓮見。


 観客「やべぇ!」


 観客「まさかの超展開来たぁ!!!」


 観客「やっぱりアイツとんでもないこと二連チャンで起こしやがったぁ!!!」


 観客「おいおい! これどうなるんだ!?」


 観客「この試合ついに奇跡が起きたぞ!」


 エリカ「やっぱり見てて飽きないわね。紅君最後の最後で今回も面白い事してくれるなんてね。ふふっ頑張れ~これならお代は全部でチャラでいいかなー。それにしてもカッコイイわね……」


 と観客席は観客席で興奮のボルテージがスパークしている頃、蓮見は一生懸命考えていた。この悪夢みたいな状況をどう対処するか。さっきみたいに小細工が通じる相手ではない。それに自分より強い相手が九人と前代未聞のピンチに身体が武者震いしてしまう。


 やっぱり美紀達とは仲間でいればよかったなと後悔しても今さら遅い。


「あれ……皆さんもしかして俺狙いですか……?」


「そうだけど?」


「もちろん!」


「邪魔さえ入らなければそうなりますかねー」


 美紀、七瀬、瑠香の言葉に蓮見の表情が苦しくなる。


「私は最初から一番の目的は紅だからねー」


「私は誰でも良かったが、私の目と耳の代償は払ってもらうぞ神眼」


 綾香、ソフィーから向けられる鋭い視線。


「そうだな、部下をやられたんだ。そう簡単に逃がすわけにはいかないしな」


「私はルフラン様の敵を倒すだけです」


 どんどん状況が悪くなる。


「俺は前回のリベンジをしに来た。ただそれだけだ」


「私の目と耳のツケはデカいわよ」


 死亡フラグが……と言うか全員の標的が偶然にも一致したある意味喜ばしい展開に蓮見は苦難の笑みを浮かべる。


 ん? ちょっと待てよ


 ここで蓮見ふと思う。

 今上空にあるパネルには美紀と七瀬が上位十人に入っていると。

 ここで俺が負けて九位を落とされても大丈夫と言うことは負ける前提でこの状況を大いに楽しんでもいいのではないかと。


「あはははは……最高じゃねぇか!!!!」




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