第228話 エリカ燃える


 イベント前日。

 各々が最終調整までを終わらせた頃。

 第三層はミニイベントこそ急遽行われることとなったが、やる事が多いフィールドであることは変わりがなかった。その為多くのプレイヤーがイベント準備とクエスト攻略、ダンジョン攻略、スキル獲得と慌ただしい日々を送っていた。


 本来であれば今日はのんびりするはずだったのだが、美紀の召集の元【深紅の美】ギルドメンバーが全員集結する事となった。


 それは美紀が手に入れた情報が原因だった。


【強襲:亡命軍】と言う名の特殊クエストが期間限定で行われたのである。それもイベント前日から三日間。イベント終わりはギルド認定書を使った何かしらのクエスト等をする予定があるギルドにとっては正に休む暇がない怒涛のクエスト&イベントの嵐のようだった。


 だが幾ら敵がうじゃうじゃいるとは言えこちらには第三回イベントでたった数分で六十人以上のプレイヤーにKillヒットとテクニカルヒットさせた【神眼の神災】こと蓮見がいるギルドの前では数は大した問題ではないのだ。

 そこで手に入る激レアアイテム【亡命の魂】を手に入れることが今回の目的となる。


「イベント前にこの限定クエストって……運営休ませる気ないでしょ」


「そうね。流石に私も今回はハードだなと思ってるわよ」


「ならなんで招集したのよ?」


「何言ってるのよ! 高値で取引されるアイテムは手に入れる商売の鉄則よ!」


「らしいわよ」


「なるほど……」


 エリカはアイテムには目がない。

 それも期間限定アイテムとなれば黙っているわけがなく、運営が告知と同時に美紀に電話からの交渉とエリカの行動力はピカイチだったのだ。そしてこのアイテムは今出回っている情報ではトッププレイヤーがいるギルドでも限られたギルドしかまだ手に入れてないらしくエリカからしたら喉から手が出る程欲しいアイテムでもあったのだ。そして【亡命の魂】を手に入れると限定アイテムの生産ができるようにもなるのだ。これは職人魂に火がつくと言うことだ。


「でもまぁ紅とミズナがいるからもう勝ったも同然ね」


「ははは……ですねー。巻き沿い喰らわなければ」


 二人のコンビネーション攻撃こそ最強の手数なのだ。


「とりあえず私とルナが三人の護衛かな」


「わかりました」


 これで蓮見と七瀬の攻撃時間を稼ぐ事が出来る。後は時間との勝負である。


「なら出発よーーーーーー!!!!!」


 とても元気の良いエリカを先頭に【深紅の美】ギルドが攻略難易度S級の限定クエスト攻略の為フィールドへと足を運ぶ。






 専用MAPを見ながらエリカを先頭に草原を抜けさらに奥にある森林を抜けていく。

 道中遭遇するモンスターは美紀と瑠香の攻撃によって簡単に倒されていった。


「ついた!」


 エリカが嬉しそうに全員に告げる。


「いやいやこれアウトでしょ……」


 美紀が苦笑いする。

 そこには数えるのが不可能と思われる武士が沢山休憩していた。焚火をしている者や会話を楽しむ者と行動はそれぞれだったが一つわかる事はこの大群が突如現れ美紀達がいつもいる城下に向かって来ている設定だということだ。


 なにより地形が悪い。周りは山に囲まれ逃げ道はない。

 それにこの大群を相手にすれば一瞬で周りを包囲され逃げ道がなくなるだろう。


「エリカどの敵を倒せばその欲しいアイテム手に入るの?」


「大将よ!」


「簡単に言うわね……」


 蓮見達は遠方からエリカから借りた双眼鏡で敵の布陣を確認していく。一番奥に布で覆われた場所に恐らく敵の大将がいるのだろうと推測をたてる。


「ちなみに大将はかなり強いってなってるから任せたわ!」


「……はいはい」


「ねぇ、里美」


「なに?」


 エリカは美紀に耳打ちする。


「まぁ……そう意図があるならいいんじゃない。気が進まないけど……」


「オッケーなら任せて」


 そう言ってエリカが近くにいる蓮見を呼ぶ。


「紅君?」


「なんですか?」


「もし今日頑張ってくれたらお姉さんが後でいいことしてあげるわ」


 蓮見の目の色が変わる。

 そして真面目な顔で確認する。


「具体的には?」


「そうねー。映画見た日、最後私としたこと覚えてるかしら?」


「はい」


「もう一回いいわよ。なんならその唇でも」


「それはリアルでのお話しですか?」


「望む方でいいわよ。もしかして私のファーストキスがお礼じゃ不満だったりするのかしら?」


「いえ! 任せてください!」


 微笑む蓮見。

 頭に手をあてやれやれと理解に苦しむ美紀、七瀬、瑠香。

 よし、これで上手い事フラグ作ってアイテム並びに蓮見の唇ゲットと内心意気込むエリカ。


「「「ばか……」」」


「ふふっ」


「よっしゃー! 行くぜー!」


 それからテンションの高い蓮見を中心に全員が奥へと進む。

 そして『【強襲:亡命軍】に挑戦しますか? YES/NO』と言うパネルが出現したのでYESを選択した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る