第219話 最恐VS最強 試合 中盤
目を細め、爆発の先にいるルフランのKillヒットポイントを凝視する蓮見。
「これだけじゃダメだ」
蓮見が正射必中を心掛け深呼吸する。
「今こそ目覚めろ。最恐にして最強の力。法陣は更なる進化の過程に過ぎず。矢を正義とするならば、悪を貫く理由となるだろう。目覚めろ『猛毒の捌き』!!!」
紫色の魔法陣が蓮見の後方に出現し矢を放つ待機状態になる。
蓮見命名の水爆はルフランがスキルを使おうと『罰と救済』によって強制テクニカルヒットになり確実に爆発するし、仮に躱しても『猛毒の捌き』が自動追尾しルフランを仕留める。我ながら悪魔の所業だと思い、蓮見が同時に矢を放つ。水色のエフェクトを神々しく放ちながら進む一本の矢。そのすぐ後ろを追いかけるようにして紫色の矢三十本が追いかける形。
現状蓮見が持つ一個人で起こせる最大火力の連続攻撃。
正直これを防がれたら蓮見にもう手はない。
だけど身体が武者震いしてしまう。
目の前にいる最強がこれをどう凌いでくるのかと思うと心の奥底が興奮しゾクゾクしてしまった。
「名付けて、俺の全力シリーズ。大爆発連鎖!」
激しく眩しい光が消え、巻き起こった火が消え始めようとした頃。
ルフランは初めて死ぬかも知れないと身の危険を感じていた。
「――なっ!?」
スキル『加速』を使い爆発中心部から一歩でも遠く離れ、アイテムを使いVIXの強化をして地面に向かって自ら倒れ込み爆発によるダメージの緩和。そこまでしてなんとか三割の損傷で事なきを得たが正直空から手榴弾の雨が降ってくるとは思いにもよらなかった。人生で初めて経験した手榴弾の雨に改めてガッカリできるような相手ではなく、むしろ隙こそ多いがその隙に甘んじた者から容赦なく倒されていくのだろうと確信する。そしてあの綾香が好敵手と認めた理由が今ようやくわかった。故に手加減はしない。そう思い立ち上がったさなかルフランは更なる危機的状況に追い込まれようとしていたのだ。
「あの矢、あれは水爆……それと毒の矢。これでは巻き上げれないか……」
「俺からの敬意を込めたプレゼントです!」
そう言ってさらに一本、また一本と矢を放つ蓮見。
そして――。
≪ 舞い上がれ 飛びたて その命を燃やし尽くせ
愛情 友情 悲しみ 全て 糧に立ち上がれ ≫
と歌い消費したMPを回復する。
それも楽しそうに微笑みながら。
それを見た多くの者が思った。
やっと【神眼の神災】が戦闘のギアを上げ始めたのだと。
それはルフランも同じだった。
いつも遠目で見ていた生と死の緊張感をくれる敵がようやく目の前に現れたのだと。
ならば――。
「面白い、面白いぞ! こうなったら俺も全力で行くとしよう!」
ルフランが後先を考えた頭脳プレイから闘争心に任せた本能によるプレイスタイルに切り替える。
ルフランの闘争本能が雄たけびをあげる。
最高! 面白い!
なにより全身の血が疼いてしまう。
この男から得られる勝利の二文字はきっと過去最高に高揚感を得られる極上の勝利なのだろうと――。
そう思うとこの状況を全力で楽しむ以外に選択肢がなかった。
「スキル『エクスカリバー』!」
ルフランの剣が光輝く。そして剣の中で光(粒子化したMP)を圧縮し一気に放つ。
「粉砕! 爆才! 大神災!!!」
蓮見が叫んだ。
「舐めるなぁー!」
ルフランも叫んだ。
そして両者の必殺とも呼べる一撃が衝突し大爆発が起きた。
――ドガーン!!!
火と水が混ざり合い爆発した。
息をするだけで肺を破壊するのではないかと思われる熱い蒸気となった熱風が辺り一面を覆いつくす。
熱い水蒸気は辺り一面覆うだけでなく視界も悪くする。
息をするたびに熱い水蒸気が肺に入り息苦しい演習場となった。
これには流石の最恐【神眼の神災】と最強【ルフラン】も予想以上に息苦しそうな表情になる。まるでサウナにいるのかと錯覚してしまう場所で戦うとなると精神的にやっぱり来てしまったのだ。
そして両者が感じとる。
この戦いは終焉が近づいているのだと。
だが、このまま何事もなく終わるはずがないとも両者思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます