第218話 最恐VS最強 試合 前半
ルフランが臆せずに突撃してきた。それにいち早く気付いた蓮見はこのままではやられると判断し後方にジャンプして振り抜かれた一撃を躱す。
「あぶねぇ……」
もし反応が一秒でも遅かったら肉片を切り刻まれていたと頭が認識する。
ただの一振りなのにスキルを使ったような威圧感がルフランにはあった。
「これが強者の力ってわけか」
すぐに空中で態勢を立て直す。
そのまま反撃に移る。
「スキル『連続射撃3』!」
五本の矢が飛んでいく。
だけどルフランは身体を少し捻る事でそれを簡単に躱す。
正直部が悪い。
だがここで逃げたら勝ち目がなくなる。
そう思い蓮見が覚悟を決める。
「なら行くぜ最強! まずは俺の全力シリーズの下準備だぁ!」
ルフランは気合い入れ直した蓮見に臆することなく再び突撃する。
振り下ろされる剣。からの斬撃。
蓮見はそれを避けるのではなく鏡面の短剣を複製し双剣として装備し近接戦闘に持っていく。
――!?
違和感を覚えるがルフランはスキルを使うタイミングを見計らいながら攻撃をしていく。
下手なスキル使用こそが自分の命を絡め取られると正しく認識しての判断だ。
蓮見の強さの一部はスキル『複製』にある。
それをいつ使ってくるかわからない以上ルフランは慎重にならざる得ない。
かつてそのスキルを前に数々の猛者がやられていったことを知っているから。
手数の差、何より実力差がでる。
徐々に蓮見のHPゲージが減っていく。
「へへっ。きたきたぁー」
次の瞬間。
ルフランの一撃が空を切った。
蓮見の自動発動スキルの条件であるHPゲージがちょうど三割まで減ったのだ。
水色のオーラを纏い、不敵に笑い始める者。
純粋な力ではやはり【神眼の神災】と言え、一方的に負けるのかと思っていた大衆を巻き込み、ルフランの好奇心を逆立てる。
「行きます。スキル『虚像の発火』!」
蓮見が後ろへと後退しながら通常攻撃と一緒にスキルで攻撃していく。
今までの倍以上、体感にしてそれ以上の攻撃が全てKillとテクニカルのみを狙い容赦なく飛んでいく。一瞬でも判断を間違えたり、反応が遅れればそれが致命傷となる攻撃をしながらAGIと自動発動スキル任せに似た逃げの一手でもあり攻撃の一手。
それでもルフランにダメージを与える事は出来ない。
どころか時に剣で矢を切り落とし徐々に蓮見との距離を詰めてくる。
流石だと言えよう。スキルを使わずにそのPS(プレイヤースキル)のみで近づいてこれる技量。
だけど蓮見はニヤリと微笑んでいる。
まるでそれでいいと言いたげに。
さらに両者の距離が縮まるかと思った時だった。
「スキル『迷いの霧』!」
ルフランの視覚を奪い動き回る蓮見。
僅かな音を聞き分けて蓮見の場所を特定し、僅かな殺気から蓮見の攻撃を予測し正確に対処するルフランはやはり化け物だと言えよう。
「へへっ! 流石ですね! って事でこれあげます。スキル『猛毒の捌き』!」
全方位からのKillヒット狙い、一本でも直撃すればその時点で蓮見の勝ちが確定する。
「この気配……、スキル『暴風剣』!」
「……しまった」
剣から放たれた竜巻が毒の矢を全て巻き込み無力化したのだ。
そして巻き込んだのは何も毒の矢だけではない。
毒の霧も一緒に巻き込み、空へと消えていった。
「この程度か?」
「相変わらず噂以上なんですね」
(っても昨日里美から聞いたのしか知らないけど)
「正直ちょっとガッカリしている」
「…………」
二人が向き合ったことで重なる視線。
「スキルをここまで使わずにお前をこうも簡単に追い込めるとは思わなかったからだ。それに投影されても困らないスキルでお前の切り札の一つ『猛毒の捌き』を封殺できた」
「……なるほど。なら俺から一つ警告です」
「ん? 強がりか」
「今日は天気がいいですけど、空襲には気をつけてください」
次の瞬間。
ルフランのスキルによって上空に巻き上げられた毒の矢ならぬ数々の手榴弾が雨のようにして降り注ぎ(重力落下し)二人の視界へと入って来る。蓮見は毒の霧に身を隠し攻撃の片手間に手榴弾をゴミのようにポンポン捨てていたのだ。そう長広範囲攻撃にならルフランにもダメージが通ると考えたのだ。
「名付けて俺の全力シリーズ。大喝采、空襲バージョン!」
当然ピンが抜かれているので時間が経てば空中でも大爆発を起こす。
それにエリカの特別性で表面に危険と書かれているだけあって威力は折り紙つきだ。蓮見は爆発の直前に「しまったッ!?」と驚くルフランを置いて全力で後方に走り、爆発の範囲外へと非難する。
目の前で起きた総数十七個による大爆発。これは第三回イベントで七瀬と美紀が綾香相手に置き土産として置いていった手榴弾の数及び威力を軽く凌駕している。眩しくオレンジ色の光が闘技場全体を包み込み、激しい光と衝撃波が同時にルフランと観客を襲う。
「「「「「きゃーーーーーーーーーー」」」」」
沢山の叫び声が聞こえる中、ある男はすぐに弓を構え、矢を番(つが)える。
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