第171話 エリカその身をもって
「さぁ、行くぜ! スキル『虚像の発火』更に『虚像の発火』!」
轟音で凄まじい勢いで二本の矢が綾香に向かって放たれる。
蓮見の渾身の一撃は増援に来た支援部隊の障壁によって撃ち落とされる。
二つの大型ギルドの精鋭による援護。だがこれだけで終わるはずがない。
蓮見のスキルを戦闘の合図として【深紅の美】ギルドの集団に向けて一斉に魔法が撃ち込まれる。
「スキル『導きの盾』複写展開!」
七瀬が全MPを使用し、広範囲に導きの盾を展開し雨の様に降り注ぐ魔法から味方部隊を護る。それでも全ての攻撃を防ぐ事は出来ない。だがまともに魔法を受けなければHPゲージを一瞬で持っていかれると言う事にはまずならないだろう。
「紅、行って!」
美紀は叫ぶと同時に近くにいた瑠香と一緒に蓮見を狙うソフィとスイレンの足止めに向かう。
「あぁ!」
これだけの人数差。蓮見をどうにかして逃がすことこそが正解なのは全員の頭が理解していた。だけど後十五分。ここはリスクを取っ手でも強気に出る事にした。どちらにしろ確実性はもうないのだから。
「スキル『アクセル』!」
綾香の急接近に対し蓮見は己を勘を頼りに弓を構え反撃していく。
綾香の攻撃が空を切り始める。
こちらの攻撃も当たらない。
それでも蓮見はひたすら攻撃をし続ける。そしてブツブツと歌いMPゲージの回復をしていく。
「スキル『連続射撃3』!」
さっきから激しく動き回っているせいか息が苦しい。
それでも蓮見は攻撃の手を休めない。ここで弱音を吐けば皆の今までの苦労が水の泡になる。それだけは絶対にしてはならない。
そうだ――。
――ギルド長として絶対にだ!!!
「まだだぁ! スキル『レクイエム』!」
MPゲージをコントロールしながら蓮見の猛攻が続く。周囲を囲まれ逃げ道がないこの状況では限界を超えて戦う以外に蓮見達が第三回イベントを終える方法はない。
「まだ負けるわけにはいかない!」
今までにない以上に集中して綾香の攻撃を避けては攻撃を繰り返す。
こちらは一撃でも攻撃が掠るだけでもゲームオーバーと言うリスクを払ってでも勝負にでている。ステータスを強引に上げてもかなり苦戦を強いられている以上、綾香は美紀達と同じく蓮見より格上の相手であることは間違いない。
「それでも……俺は最後まで諦めねぇ!」
最悪勝てなくてもいい。ただ今だけでいい。たった数分から数十分だけでいいからいい勝負ができればそれでいい。
そんなガムシャラな状況でも奇跡は起きない。
「貰った! スキル『幻影の舞』!」
一瞬態勢を崩した隙を狙われた。
今からでは回避することは絶対に無理だ。
「くッ……ここまでか……」
そう思った蓮見。
――だが、そうはならなかった。
エリカが走って来て蓮見と綾香の間に両手を広げて立ちふさがる。
そして――。
綾香の攻撃から蓮見を護った。
「後はお願いね……紅君……」
エリカのHPゲージが全損し光の粒子となって消えていく。
気付けばイベントの残り時間は五分を切っている。
故にエリカが復活する事はもうない。
「エリカさーーーーん!」
蓮見は目から零れる涙を拭き、態勢を立て倒して次の攻撃に備えた。
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