第170話 厄介な同盟
お互いがお互いを警戒しながらも戦いの隙を見て、HPポーションとMPポーションを飲む三人。
美紀と七瀬は横並びになり、小声で話す。
「気付いた?」
「えぇ。可笑しいわね」
七瀬が可笑しいと言ったのにはちゃんとした理由がある。
今も仲間部隊が蓮見達によって苦戦し押されているのにも関わらず、美紀達と同じく常に余裕を残しているのだ。
仲間部隊がやられれば当然不利になるにも関わらずだ……。
「攻めては来る、けど踏み込んだ攻撃はしてこない……」
「そうね……」
その時、運営からイベントの途中経過が送られて来た。
三人がそれを警戒しながらも確認する。
一位:ラグナロク
二位:雷撃の閃光
三位:灰燼の焔
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十位:深紅の美
この最後の局面で【深紅の美】ギルドが十位にランクアップしていると言う事は大型ギルドの一つが潰されたと言う事だ。この現実に美紀達の最後の目標が決まった。
「後は生き残るだけになったわね……」
「みたいね」
「へぇ~良かったじゃん。十位だってよ」
「そうね。てかなんで私達の順位が上がって喜んでくれているの?」
「それはだって、ほら……こっちも最後の戦力が到着したからかな」
そう言って綾香がほほ笑む。
綾香の視線の先にはソフィとスイレンの二人。
その後ろには沢山の両ギルドのギルドメンバー。
「なっ!?」
「うそ!?」
「なに驚いているの? 散々私達を利用してたじゃん。だったら敵は同じ、利害は一致。更には二位と三位つまり争う必要はそもそもない。だってこのまま何もしなくてもお互いに入賞は確実。だったら手を組んで倒すべき敵を倒す方がいいじゃない。残念ながらリュークは交渉前にした私とソフィとの戦闘でかなり消耗していたから連れては来れなかったけどね」
その言葉に美紀と七瀬が言葉を失う。
やられた……ここに来て最悪の展開だ。
イベント終了まで、あと十五分。
ここまで来てやられるのか。
「簡単に言うと私は紅達が逃げた場所を突き止めて、本体が来るまでの足止め。それで地盤を固めて最後は私がその首を頂く。なんて理想的な戦い方だとは思わない?」
気付けば圧倒的な援軍の数に先ほどまで優勢だった蓮見達が後退を始めていた。
「あんた……まさか……」
「そう。私と紅の勝負は十五分もいらない。なによりこの数相手に里美たちが残り十五分ギルド長である紅を護りながら戦えるとは思えない。既に周囲は包囲もしている。さっきみたいに逃げられる心配もない。さぁ、どうする?」
「まぁそうゆうことだ。こちらとしてもやられたままでは割に合わないのでな。神眼悪いが今度こそ私達の勝ちだ!」
勝利を確信する【雷撃の閃光】ギルドと【灰燼の焔】ギルドの同盟。
恐らく第三回イベント最強ギルド同盟であろう。
「なるほど。里美悪いけど、綾香さんの相手は俺に任せてくれないか?」
蓮見はそう言って美紀達の前に立つ。
それは今まで護られる存在だったギルド長の姿ではなかった。
HPが一割になった蓮見の身体には水色のオーラ。それがまた強者の雰囲気に似たなにかを生み出しているようにも見える。
「……えぇ、わかったわ」
美紀が頷く。
頬を力強く叩いて蓮見は自分に気合いを入れた。
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