第149話 生命力
「チッ、仕方ないわね」
七瀬が舌打ちをして、集中する。
MPポーションで回復した七瀬のMPゲージが一気にゼロになる。
蓮見が知らない、必殺となるスキルを七瀬がお披露目する。
七瀬を中心とした大きな魔法陣が地面に出現する。
システムアシストによってスイレンの素早い動きが捕捉され七瀬の視界に敵座標が表示される。
茶色い髪が赤色に染まり、ゆらゆらと燃え始める。
本日二度目となる姿にスイレンが最大レベルで警戒し叫ぶ。
「リューク! 今すぐ逃げて!」
リュークとスイレンは知っている。魔法陣を使うスキルや魔法は入手難易度が非常に高く扱いが難しく更には一日の使用回数に制限があることを。だがその分威力は折り紙つきであることも。そしてこれはスイレンでは止める事が出来ない超高火力魔法であることを。
「行くわよ! スキル『爆焔:炎帝の業火』(ばくえん:えんていのごうか)!」
魔法陣が消え、今度は杖が赤い色に染まり強い光を放ち始める。
そして杖から『焔:炎帝の怒り』を容易く凌駕した燃え盛る炎がスイレンを襲い、そのまま不死鳥の攻撃に対してスキルで対抗していたリュークの元へ飛んでいく。
リュークは知っていた。
七瀬のこの魔法は不死鳥の最大火力よりも強いことを。
その為、七瀬とは正面から戦うことを避けていた。だけどたった一人の男の行動だけが読めない為にこうなった事を後悔した。これはスキル単体の威力は不死鳥の方が高いのだが、それを扱う使用者のINT値による影響を受けているためである。
「くっ……!」
「だったら貴様も道ずれだ!」
リュークは持っていた大剣を全力で投げる。どうせもう抵抗する手段は殆どない。ならばと思い最後の悪あがきをした。
大剣は空中で爆発し、粉々になったかと思いきや小さい剣に分裂。
更にはその小さい剣全てに赤い炎が宿っていた。
「うそだろ……!?」
リュークが七瀬の攻撃を受けたタイミングで高速接近した小さい剣が蓮見の身体を貫く。
「この程度でうちのギルド長が死ねば誰も苦労しないわよ」
七瀬の呆れが入った言葉が何故かリュークとスイレンの耳にはハッキリと聞こえた。
戦場には蓮見と七瀬そして少し離れた所に瑠香が立っている。
どうやらリュークを倒すのは失敗したらしい。あの瞬間後方からの障壁と回復がリュークを援護し倒せなかった。
しかし敵は戦意喪失し拠点は蓮見達の支配下に入る事になった。
「って、本当に生きてるし……」
「まぁ、どの攻撃が致命傷になりそうとかは見えるから……とでも言っておきます」
蓮見は【鏡面の短剣】を腰に直しながら、HPポーションを飲みながら答える。
そう蓮見はあの瞬間、【鏡面の短剣】を腰から抜き、自分のテクニカルヒットポイントとなりやすい剣から不器用ながら切り落としていた。そしてそれは裁ききれずにダメージを受ける程より正確に、より早く撃ち落とせるようになっていた。
スキルアシストの力とは言え、七瀬は近くで見ていて本当にゴキブリみたいな生命力だなと内心思ってしまった。
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