第81話 勘違いからの俺最強シリーズ?
蓮見が座り込み色々と今までの事、そしてこれからの事を黙々と考えているとHPがなくなってくる。とりあえずもう一度HPポーションを飲んでおく。
「あれ? あいつのHPが半分で止まってる」
執事も今までの敵と同じくHPの変化量に応じて攻撃パターンと耐性が変わるようになっている。完全異常耐性無効ともう一つ。
ポーションを飲んだ瞬間、その音に反応した執事が走ってくる。
「マジか!?」
慌てて立ち上がった蓮見は弓を構え攻撃態勢に入る。
「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」
蓮見の声と同時に毒の矢で五本の矢が発火し放たれる。
矢はそれぞれ右足、左足、心臓、右腕、左腕とテクニカルヒットのポイントに向かって飛んでいく。
そしてそれが全て当たり、大爆発が起きる。
爆風によって蓮見の身体は後方に吹き飛ばされ、ギリギリで障壁を展開しダメージコントロールをしてきた執事の鋭く重い蹴りは空を切った。
物音を立てず残りの『迷いの霧』を使ってみる蓮見。
二人がいる空間の毒の濃度が更に上がる。
(やっぱり毒はもう効かないのか……。それとアイツさっき音に反応したのか……)
状況整理を落ち着いてする蓮見。
その時、頭の中に音声が聞こえてきた。
『スキル『毒無効』を獲得しました』
これでお互いに毒の霧は意味がなくなった。
ただ視界が悪いのでお互いに柱には気を付けて動かないとぶつかりそうなぐらいにはまだ少しだけ意味があった。
蓮見は今度はどうすればこの状況を打破出来るかを考える。
――いけるか
――ミズナさんが求める実力をつけなければ
――美紀が悲しむ
――ならば、限界を超えるしかねぇ!
「来い! 悪魔!」
直後、蓮見は【鏡面の短剣】を複製して両手に持ちながら一直線に走り始める。
「おや、そこですか。ようやく見つけましたよ」
執事は獲物を見つけた肉食動物のように勢いよく飛び掛かってくる。
「スキル『分身』!」
空中で五体に分身した執事を見て、蓮見が囲まれないように立ち回る。
それでも手数の多さにほぼ一方的にやられ始める。
HPが三割を切ると同時に水色のオーラが蓮見の身体全体を包み込む。
『風を超えて』の効果が発動しAGIが1.5倍になる。
「これは……スキルの効果か」
AGIが強化されたことにより動きに余裕が出来る。
ならばと思い、複製した剣を捨て武器を弓に変更する。
そのまま近くにある柱を利用しながら相手の攻撃を躱しながら反撃していく。
「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」
執事の本体と分身体が一点に合流したタイミングでまとめて吹き飛ばす事にする。
すると躱せないと判断したのか分身の四体が本体を護り消滅していく。
毒の霧で数メートル先ですらはっきり見えない中での戦闘に蓮見の神経は今までにない以上に擦り減る。
まさか良かれと思って発動させた毒の霧が自分を追い込むとは予想にすらしていなかった。
少し気合いを入れてみたが簡単に実力差がひっくり返る事はなかった。
「流石お嬢様を狙うだけはありますね。添菜にしては十分過ぎるぐらいに極上の魂をお持ちのようで私は嬉く思っております。ではここからは本気で行きますよ」
どうやらHPが三割を切ると、更に強くなるらしい。
今度は空中に浮き、自由自在に動き回る執事。
当然移動速度は速いままだ。
「……そんなに天才って褒められても……んっ? 天才……毒の霧……視界が悪い……一人……空……本気……俺最強シリーズ?」
なにかの呪文のように蓮見が呟く。
本来であればこの広い地形を活かしてパーティーで連携して攻略する相手である。
それをただ座り毒だけでHPの半分を削った蓮見。
ここでAGIが150を超える執事が異常状態耐性と毒の攻撃を得てプレイヤーを苦戦させるはずだった。
逃げれば毒がプレイヤーを襲い、立ち向かえば素早い連続攻撃をしてくるというコンボのはずだったのが、先に蓮見が毒耐性を手に入れて、神殿全体にも毒の霧を振りまいてしまったので執事の強さがいまいち伝わっていなかった。蓮見のAGIも強化されれば基礎値64に『風を超えて』で1.5倍で96まで上がる。これはHPが三割切る事が条件だがその時には更に火事場スキルも重複して機能し、執事の得意な近接攻撃には『領域加速(ゾーンアクセル)』も機能するのだ。この時蓮見のAGIは執事のAGIを超えるのだ。あの美紀ですら『加速』を使ってもAGIは135である。
更に分身は本体の半分の強さを持つのだが最後はKillヒットで倒した蓮見。
「よし、あれやるか」
――相手が人型ならばやる事はただ一つ!
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