第77話 好きになった相手が悪すぎた


 ――ログアウトして。

 あれから蓮見は自分の部屋にあるベッドの上でゴロゴロしながら少年漫画を読んでいる。今までとは違い春休みの宿題が別にあるわけでもないので夜ご飯が出来るまでは自由時間である。


 久しぶりの一人の時間。

 決して悪くない。

 誰にも邪魔されない時間と言うのは。


「アハハ! これ面白いなー!」


 一人で漫画を読んでいると日が沈み、部屋が暗くなってくる。


「あれ、もうこんな時間か」


 部屋の電気を付けて、窓から隣の家をさり気なく見てみるが、まだ暗いままだった。


「まだ皆で話してるのか」


 唐突に少し寂しい気持ちに襲われた。

 よくよく考えて見たら、今の家に来てから少しでも時間があれば美紀とゲームし、時には一緒にご飯を食べたり、勉強したり、夜を一緒に過ごしていた。

 そんな美紀が今は他の誰かといると思うと胸の中がモヤモヤした気持ちに襲われた。


 少し前までならこれが当たり前だった。


 だけど、気づけばいつも隣にいてくれる美紀に甘えている自分がいて、そんな美紀がやはり隣にいる事が自然となっていた。

 今日もギルドホームで美紀の帰りを何だかんだ待っていたが、結局は無駄に終わった。


「……はぁ。何でこんなにモヤモヤしないといけないんだ」


 窓の外に見える灯りが暗い理由は分かっている。

 だけど、急に離れられると少し寂しく感じてしまった。


「今まではただの幼馴染としてしか見てなかったけど」

 蓮見はボケーと天井を眺めながら言葉を紡ぐ。

 今までは認めたら負けだと思い、意固地なしになっていた。


「そっかぁ。俺が……美紀の事が好きだからか。どんなに頑張ってもあの美紀が全て平凡な俺なんかを好きになるわけなんてないのにな……」

 自分の気持ちに気付いた蓮見は大きくため息を吐いた。

 最近よく甘えてくる美紀を可愛いと思い、何度も異性として意識する瞬間があった。

 だからなのかもしれない。


 こんなにも胸が痛くなったのは。

 美紀のせいだ。


 今回ばかりは相手が悪い。

 好きになった相手が悪すぎた。

 まさか初めて異性として好きになった相手が学校で男子から人気を集めている美紀だったとは。


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