第65話 俺に採掘アイテムを!



「エリカさん隠れててください!」

「うん。わかった」


 蓮見が周囲を警戒する。

 エリカが隠れた場所を頭の中に入れて、まだ姿を見せないボスを探す。


「スキル『イーグル』」


 するとボス部屋の奥の方から音が聞こえてくる。

 そして、紫色の瞳を輝かせながら姿を見せる。


「こ、これが毒龍なのか!?」

 それは毒龍とは到底思えない姿をしていた。

 全身はクリスタルの表面のようにキラキラと輝いており、両目の瞳は宝石のアメジストのように鮮やかな光を放っていた。


「これ毒龍って言うより……宝石龍って名前の方がしっくりくるな……」


 ボスを目の間にして岩影から心配するエリカを他所に蓮見は一人別の事を考えていた。

 そして、毒龍が蓮見の前に来る。


 いよいよ戦闘開始だ。


「スキル『連続射撃3』!」

 五本の矢が毒龍の頭部に向かって放たれ勢いよく一直線に飛んでいく。

 先制攻撃をして相手の動きを見つつ、相手との距離を取る。

 蓮見の攻撃など興味がないと言いたげに、口から噴き出した濃い紫色のブレス。

 それによって五本の矢が空中で溶かされ消える。


「嘘だろ……!?」

 毒に腐食作用がある事までは考えていなかった蓮見はいきなり大ピンチに陥る。

 これでは蓮見の攻撃は通用しない。

 テクニカルヒットやKillヒットは当たらなければその効果を発揮しないのだ。


「ならスキル『レクイエム』!」

 最大火力のよる攻撃ならばと思い毒の矢に切り替えて放つが、毒龍のHPゲージは一割も削れなかった。これではクリティカルヒットなしではかなり部が悪い事がわかってしまった。

 MPポーションを全て使えば倒せなくもないが、今までの傾向からボスが途中から強くなることは分かっていた。そう考えるとどうしても今の蓮見には攻めてが足りなかった。


 ――クソッ。あまり逃げ回ってるとアイツがエリカさんを狙うかもしれないな


 通常攻撃では毒龍の吐く濃い紫色のブレスで全て腐食され無効化されるがどうやらそれでもMPゲージは溜まるらしい。


「悪いがお前の相手は俺だ!」


 毒龍のテクニカルヒットとなる黄色い点は何故か沢山あり身体のあちらこちらにあった。

 恐らくクリスタルと言う事で幾つものクリスタルが組み合わさって出来た龍なのだろう。

 そこで蓮見は狙いを悟られないように不規則に黄色い点を狙い、矢を放ちながらボス部屋を駆けまわる。


 毒龍の動きは蓮見より遅いが、重量がある分攻撃力はあった。

 かすっただけでもHPゲージが二割程度削られる。

 いつどんな攻撃が来てもいいようにHPゲージが三割を切ったタイミングでHPポーションを飲んでおく。自分が死ねばエリカが危ないと言う危機感からもしもの事を考えて『火事場』系統のスキルを使った戦法は使わない事にした。


「っと、危ない危ない。今だ! スキル『連続射撃3』『虚像の発火』更に『連続射撃3』『レクイエム』の2連打!!!」

 毒龍の上空から勢いよく振り下ろされたアイアンテールを躱し、蓮見の反撃が始まる。

 第二回イベントで手に入れたスキルの連続使用と連続射撃の組み合わせにより十本の矢が毒龍の身体を同時に襲う。そのうち半分の矢はレクイエムの上位版で発火+20を持っている。


 そして毒龍が口から噴き出した濃い紫色のブレスが七本の矢を腐食し無効化する。

 だがそれでも全部は間に合わなかったらしく、三本の矢が直撃し大爆発を起こす。


 ドガーン!!


 爆風と爆炎から蓮見を襲うがその場で腰を低くして踏ん張る。

 どうやら発火性能が上がり、『レクイエム」とは比にならない破壊力を持っているらしい。

 流石は『レクイエム』の上位スキルだ。


 すると頭の中に声が響く。


「鉱石『ロードライトガーネットの欠片』を入手しました」

 更に目の前にパネルが出現する。


『今後戦闘中にアイテムをゲットした際、音声案内を必要としますか YES/NO


 ※初期設定画面から後から変更可能                    』


「なら今はNOで」

 手早くパネルを操作して戦闘に意識を戻す。

 さっき黄色い点つまりはKillヒットではなくテクニカルヒットした矢は一本だった。そして鉱石を手に入れた。どうやらテクニカルヒットを起こせばドロップアイテムが手に入るらしい。それにダメージもしっかりと与えられるみたいだ。


 蓮見の頭が急速に回転を始める。

 そして悪い顔をする。


「ふふっ。俺様はやはり天才だぜ!」


「エリカさん! 鉱石発掘用に持ってきたピッケルってあります?」

 蓮見が大声でエリカの問いかける。


「えぇ! お店で商品として売っている物を入れれば今手元には80本ぐらいあるけど!?」

 エリカは戸惑いながら返事をする。

 一体そんなものを何に使うのかと。


「ならその中で耐久値が高い順に適当に俺が持てるだけ下さい!」


「えぇ!?」

 まさかこの男戦闘中にボス部屋の壁にある鉱石から発掘をするつもりなのか。

 そんな感じの表情で蓮見を見るエリカ。


「早く!」

「わかったわ! ならこっちに来て。まとめて渡すけど余ったらちゃんと返してね!?」

 さりげなく返却を要求するエリカ。

 流石は商売人である。

 蓮見はすぐに毒龍の間隙を縫ってエリカの元に行き、発掘アイテムを受け取り戦場に戻っていく。


「一体あんなものを何に使うつもりなのかしら。発掘中は武器すら持てないのに……」

 エリカはとても不安になった。

 一体蓮見が何を考えているのかがわからなかったのだ。

 だが、その疑問はすぐに解決する。

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