第七章 暴れる天災と新たな仲間
第64話 蓮見とエリカのお出掛け
テストが終わり、蓮見は久しぶりに『YOU FANTASY MEMORY』にログインしていた。何でも美紀は家の用事で今日はログインできないらしい。そんなこんなでギルドホームの中で今日は何をするか一人考えていた。
提示板でも見てこの数日で何か新しい情報が出たか確認しようとしたが面倒なので止めた。
「何かいいスキルないかなー」
と一人呟いていると、エリカが話しかけてくる。
蓮見が視線を天井からエリカに向けるとこちらに向かって歩いていた。
「なら私のアイテム発掘に付き合ってよ。そこにいるクリスタル毒龍を倒せばスキルが手に入るわよ。名前は【迷いの霧】よ」
エリカは蓮見の隣に腰を降ろす。
「それはどんなスキルなんですか?」
「毒の霧を発生させて相手の視界を奪い毒でダメージを与えるスキルよ」
一見これだけを聞くと素晴らしいスキルなのだが、今の蓮見には問題が合った。
その問題を解決しない限り、蓮見にとっては興味はあるが魅力的で欲しいとも思わないスキルだった。
「なるほど。でも俺、毒耐性ないので」
申し訳ないがここではエリカの提案を断る事にした。
山火事の時と同じく、徐々にHPを削りながら強くなる方法としてはありだが、あまりそう言った荒業は格上相手には不利だと先日のイベントで気付いた。少なくとも機械少女は発火や熱耐性を持っていた。だからこそ機械少女は強かったと蓮見は考えていた。
「そこは大丈夫! だから指輪をあげるわ。これは毒と麻痺耐性【大】がある指輪よ。それに今紅君が付けている初心者の指輪と同じくHPとMPも+5されるわ。だからお願い。私どうしてもそこの鉱山でしかとれない紫色のクリスタルが欲しいのよ」
蓮見の指についている初心者の指輪を取って、エリカ自身が持っていた【龍脈の指輪】を指に嵌める為に、それは結婚式で愛する人の指に指輪を嵌めるように慎重な手つきで行われる。蓮見がエリカを見ると、下から見上げるようにして誘惑をしてくる。
「私、紅君の事カッコイイと思うわ。だからお願いできないかしら?」
「わかりました! エリカさんが望むなら俺頑張ります!!!」
最後はエリカの誘惑に負けるも、年上の綺麗で若いお姉さんの為にここは男として一肌脱ぐことにした。
何度でも言うが、蓮見の心の中は今彼氏がいない綺麗なお姉さんにもモテたいと思っている。
これは下心ではないのだ!
そして少しでもカッコイイ所を見せて異性として見てもらいたいと言う願望は健全な男子高校生なら合っても可笑しくないだろう。
否、なければいけないのだ。
そうだ【男として可愛い兼綺麗な女の子には好かれたい!】これは当たり前の感情であり健全な男子高校生蓮見の本音でもある。
「フフッ。ありがとう。やっぱり紅君って頼りになるわね」
完全にテンションが跳ね上がった蓮見の目は今までにない以上にやる気で満ちていた。幸いここには美紀がいない。なのでこうなった蓮見を止める者はもう誰にもいなかった。
早速二人でクリスタル毒龍が出る洞窟に歩いて行く。
洞窟に着き、中に入っていくと思っていたよりも高い天井と横幅もあった。
エリカを護るようにして奥へと進んでいくと、紫色のスライムや蜘蛛が地面や壁、そして時には天井を這って突撃してくる。
「スキル『イーグル』!」
機械少女と比べれば動きが遅いスライムや蜘蛛など今の蓮見の敵ではなく、放った矢がKillヒットし次々と光の粒子となって消えていく。これは美紀の教えだ。相手の動きを見て矢を放つのではなく、相手の動きから次の動きを予測してその場所に矢を放つ事で、まるで矢がモンスターに吸い込まれていくかのように次々と刺さっていく。
「凄い! 紅君強くなってる! やっぱり女は強くて優しくて頼りになる男性には護ってもらいたくなる生き物だわ」
「ありがとうございます!」
エリカに褒められニヤニヤが止まらない蓮見。
そんな蓮見を見て素直で可愛い年下の男の子だなと思うエリカ。
「さぁ奥へと行きましょう!」
蓮見の手を取り、エリカが誘導する。
二人で奥へと進む途中エリカから聞いた話しによると、クリスタル毒龍は大盾使い以上のVITを持っており中々倒す事が出来ないらしい。そこでKillヒットを狙って出来る蓮見なら倒せるのではないかと思い連れてきたらしい。何でもボス部屋にある紫色の鉱石はとても貴重らしく生産職プレイヤーとしては喉から手が出る程に欲しいレアアイテムらしい。だけどプレイヤーからそれを買い取ると流通量がかなり少ないことからかなりの値段になるらしい。そこでエリカは【龍脈の指輪】だけの経費でそれを手に入れようと考えたのだ。これは毒龍を倒せるプレイヤーの中で発掘系のスキルが高いプレイヤーがかなり少ない為である。ちなみに正式名称はクリスタル毒龍だが名前が長いので世間的には毒龍と略しているらしい。
今まで【神眼の天災】がハイテンションの時に何も事件が起きなかった日はない事をこの時エリカは完全に忘れていた。そして今日をきっかけに更なる天災を起こす存在になるとはこの時誰もが思いもしなかった。そう、スキル習得を勧めたエリカでさえも。
奥へと進んでいくと、紫色の花が毒の霧を吐いていたり、紫色で見るからに毒の水滴だと分かる物がポタポタと天井から落ちてきたりと何とも違和感しかなかった。蓮見とエリカは装備品【龍脈の指輪】で毒の効果を無効化しているので特に影響はないが、毒耐性のないプレイヤーならばボス部屋にたどり着く前に死んでしまいそうだった。
洞窟の最深部にたどり着くと二人の前に大きな扉が見える。
「これはまた……大きいな……」
「だね。紅君悪いけどここから先はお願いね。私は紅君の邪魔にならないようにボス部屋の隅っこにいるから」
「任せて下さい!」
「うん。期待しているわ」
二人がかりで両開きの扉に力を込めて開け、恐る恐る中に入る二人。
そして二人が中に入り切ったタイミングで扉が勢いよく閉まり、二人をボス部屋の中に閉じ込める。視界を部屋全体に泳がせると、毒の沼に毒の花があちらこちらにあった。また毒の沼はポコポコとしており、そこから紫色の気体を発していた。
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