第42話 いつもよりカッコイイ蓮見


「スキル『イーグル』『連続射撃3』!」

 蓮見の矢が油断していたNPCの鎧を貫き、Killヒットを起こし倒す。


「スキル『加速』!」

 仲間の死を見てか、蓮見に警戒しながらも美紀に襲い掛かるサムライ。腰から刀剣を抜き気迫あふれるサムライの一太刀を槍を使い受け止める美紀。


「紅! 前よ!」


 その時、森の奥の方から蓮見に向かって矢が飛んでくる。

 どうやらサムライだけではなく弓兵もいるようだ。


 美紀の言葉を聞いて間一髪躱した蓮見はすぐに射撃体勢に入る。

「スキル『連続射撃3』『レクイエム』!」


 蓮見の放った矢は距離を関係なくして姿を隠している敵に向かってただ一直線に飛んでいく。木々の葉を燃やしながら圧倒的な破壊力で森影に隠れる弓兵を襲う。だが矢は当たる瞬間に障壁によって止められた。


 どうやら向こうもスキルを使うらしい。だが、反撃が来ない。

 恐らく隠れていた木々が燃え始め、それどころではないのだろう。

 MPポーションを飲み再び『連続射撃3』と『レクイエム』を放つ。


 蓮見の連続攻撃に次は打つ手がなかったのか沢山の悲鳴が聞こえだす。

 パネルが表示されポイントが増えた事からどうやら敵を倒す事に成功したらしい。


 仲間の死に動揺するサムライの隙を見て、美紀が反撃を始める。

 蓮見の援護がある美紀と後方からの援護がなくなったサムライでは戦況は大きく傾いていた。

 美紀が蓮見の方にサムライがいけないように注意しながら動き周りダメージを与えていく。


「スキル『ライトニング』!」

 雷撃が地面に向かって飛んでいく。

 侍が動く瞬間大地を通して雷撃がサムライを襲う。

 ダメージこそないが感電のスキルで一部のサムライの動きが鈍くなる。

 更にはそれを機に連携が崩れ始める。

 

「スキル『連撃』! まだまだぁ! スキル『雷撃』『連撃』!」

 美紀の攻撃に次々とサムライが倒れていき数を減らす。

 本来なら後方からある援護射撃がないサムライ達に最早なすすべはなく光の粒子となって消えていった。


「お疲れ、里美」


「うん。紅もお疲れ様。それにしても紅援護上手くなったね。少しだけ……いつもよりカッコよく見えたよ。……にしてもこれはどうするつもりよ」

 そして美紀は燃える木々を見て、笑みを引きずった。


 美紀から褒められた蓮見の顔は笑みがこぼれていた。

「まぁな。これでもやるときはやる男だからな!」


「……そうね。でもまぁ、そのおかげで大物が釣れたみたいよ」

 燃える木々の中から見える人影。


 いよいよボスのお出ましだ。


 鎧に護られた将軍が炎の中から姿を見せる。

 背丈は蓮見とそんなに変わらないが、体格が良く下手に近づけば一瞬で力負けしてしまいそうだった。

 将軍が二人に気付いて、口角を上げて微笑む。

 まるで追っていた獲物をようやく見つけたような笑みだった。


「アイツを倒せば大量にポイントゲットってわけか……。燃えてきたぁぁぁぁ!」


「そうね。ならアイツの首をもらいましょ!」

 美紀が頷く。

 両者の距離はおよそ十五メートル。

 美紀が槍を構え、最速で突撃する。

 将軍も腰に掛けている鞘から刀を抜き、前進してくる。


 美紀を真っ二つにする勢いで振り下ろされる一撃を蓮見が的確に射抜き軌道を逸らす。そのまま半身になって攻撃を躱した美紀がすれ違い様に一撃を叩き込む。そのまま反撃を躱すようにして美紀が距離を取る。


「流石! ナイスよ……ってうそ!?」

 美紀が追撃をしようとしたとき、驚くべき光景を目にする。

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