第9話 山火事
当初の予定通り魔の森それも人気が少ない奥の方まで来た蓮見。
「あれ? 考え事をしている間にまたここまで来てしまった……」
ガサガサ
「んっ? よし早速俺様が強くなったことをこいつ等で証明………させて………もら……ってなんだあれ!?」
魔の森の奥深くに人がいるわけなくそこにいるのはモンスターなわけで。
沢山の木々の隙間から蓮見の声に答えるように突然姿を見せた人間ではなく巨大なゴーレムに蓮見はつい言葉を失った。ただし午前中に見たゴーレムとは違い今度は同じ大きさで色が黒に変わったゴーレムが二体出てきた。
「だから……なんでいつもこうなるんだよ!!! せっかく同じ敵でどれだけ強くなったか試そうと思ったのによぉぉぉぉぉ!!!!」
夜空を照らす星を見て、誰にも聞こえないとわかっておきながら大声で叫ぶ。
「クソォォォォーーーーー」
とりあえず声を出してストレスを発散し敵の名前を確認。
「ゴーレム……改?」
そのままLvを確認すると二体ともLv.23だった。
ギルド前にある提示版をしっかりと読んでいれば誰でもわかるのだが、魔の森の生態系は朝と夜で出現するモンスターが一部違う。当然提示板を一度も読んだことがない蓮見が知るわけがない。エリカの言っていたゴーレムとはゴーレム改の事である。蓮見が一度倒したゴーレムはただのゴーレムだった。
そして戦闘開始。
蓮見がどうするか迷っていると正面と後方からゴーレムの巨大な手が迫ってきた。
昼間のゴーレムより動きは少し早いぐらいだった。
「ん? んっ~思ったより遅いな」
昼間のゴーレム戦で感覚が残っている蓮見は大きくジャンプして躱す。
この時、蓮見は気付いていなかった。
実はこのゴーレム昼間のゴーレムと比べると全ステータスが2倍ある。
そう攻撃速度も2倍なのだ。
対してレベルアップしていないからと言う思い込みから武器と防具の性能で自身の能力値が上がっている事を完全に忘れている蓮見は心に大きな余裕が生まれた。
そう勘違いをしているのだ。
上昇したパラメータはDEXとCRIだけだと……。
その為AGIが約1.5倍に上昇した蓮見は少し早いだけだと勘違いをしてしまったのだ。
「よっしゃー! 少し遊んでやるぜ。来いゴーレム共!!!」
と調子に乗るまでに時間はかからなかった。
ゴーレムの攻撃を躱し、挟撃される不利な状況に敢えて自分を追い込む蓮見。
そして攻撃を躱す。
単純な動きを繰り返す。
これに何の意味があるのかと言うとゲーム的にはない。
ただ蓮見がアニメの主人公のようにカッコイイシーンを自ら作り楽しんでいた。
「二体のゴーレムからの攻撃をギリギリで躱して、ゴーレムのパンチとパンチがぶつかり合う。そしてダメージを与える。フッ、我ながらカッコイイぜ!!!」
ドン!!!
二つの強大な拳と拳がぶつかり合う音がいつの間にか日が沈み暗くなった森に響く。
ドン! ドン!! ドン!!!
蓮見のおふざけに巻き込まれたゴーレムのHPゲージがお互いの攻撃を受ける事によって徐々に減っていく。
一方蓮見のHPゲージは一切減ってない。
その間もプレイヤースキルの一つ回避技術という一点において凄い勢いで成長していた。
一時間が経過した所でゴーレムのHPゲージがようやく赤色になる。
その頃にはゴーレムの攻撃パターンを全て把握していた。
「なら最後はカッコよく決めるぜ。『イーグルアイ』」
蓮見の言葉をスイッチとしてスキルが発動する。
黒いゴーレム二体の中心部に黄色い点が出現する。
「お! 点が大きい……つまりDEXとCRIを上げれば点が大きくなるのか」
実はこれも勘違い。
自身のDEXとCRIそして相手のAGIに影響をされる事をやはり提示板を一切見ていない蓮見が知る事はなく。
勘違いが勘違いを生み、気付けば歯止めが効かなくなり出していた。
走り回りゴーレム二体が一直線上に並ぶように誘導して弓を構える。
「我が命ずる。秩序を乱す者達に裁きを与えよ。弓は心、弦は心を矢に伝えるバイパス。矢は裁き。裁きの象徴として悪を貫く。今こそその真価を発揮しろ『レクイエム』!!!」
誰かが聞いたら頭の可笑しな事を言っている人間にしか見えない中二病全開の詠唱を突然始めたかと思いきや、MPゲージ10割全て使い発動した『レクイエム』はゴーレムの中心部にある黄色い点に向かって轟音と共に飛んでいく。矢から発せられた風を切る音と衝撃波が木々の葉を揺らす。
「悪いな。この俺に敗北の二文字はねぇ!」
ゴーレムに背を向けドヤ顔で呟く蓮見。
そして一体目のゴーレムにクリティカルヒット、更に頑丈なゴーレムの身体を貫いて二体目のゴーレムの黄色い点へ突き刺さり大爆発。
夜の森を大爆発で起きたオレンジ色の光が照らす。
そして爆弾を爆発させたように爆風と熱、そして炎が周囲に広がる。
『スキルを獲得しました。レベルが15に上がりました』
スキル『詠唱』
効果:魔法の効果を2倍にする。自動発動。
獲得条件:五節以上の詠唱をして魔法攻撃を発動して止めをさす。
蓮見の後方では先程起きた爆発が原因で山火事が起きていた。
だがそんな事よりも今の蓮見にはやるべきことがあった。
スキルの確認とステータスポイントの振り分けである。
スキルを確認し今正に悩んでいた。
「さて3ポイント何処に振ろう……」
燃え盛る炎をバックに真剣に悩む男。
「INTを上げれば『レクイエム』が強くなるのでは……もっと言えば『イーグルアイ』も影響を受けてもしや点が大きくなる……?」
森にいたモンスターが慌てて逃げ始める。
「いや逆に『絶対貫通』がある今必要なのは命中率ではないか……。フッ、俺頭いい。ってことでDEXに3ポイントと」
ステータスポイントを振り分けて何やら騒がしい後ろに視線を向ければ、炎が勢いよくオレンジ色の光を放ちながら燃え広がり、どんどん大きくなっていた。
「うぉ!? なんだこれ?」
爆発が起きる前に背中を向けていた蓮見がようやく自分の世界から帰ってくる。
そしてクラウチングスタートの構えを取る。
そして、
「全力で全速ダッシュだぁーーーーーーーーー!!!! 誰だよ、あんな山火事起こしたバカぁ!」
と叫びながら全力で街まで戻る。
最後はどうもカッコ悪い蓮見であった。
誰かが見ていたら多分こういうだろう。
「お前だ! バカ野郎!」
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