CHAIN_8 デント部の現状
「ええ!?」
「ウソでしょー!?」
翌日の放課後。ツナグとリンはデント部の部室で声を上げた。
「部長。大会に出られないってどういうことですか?」
「落ち着いてくれ、ツナグ君。出られるには出られるんだ」
「一年。見てみなよ僕らを。何が足りないかすぐに気づくでしょー?」と両手を広げて見せるレイト。
「……やる気が足りない、とか?」
おそるおそる言ったその言葉にレイトは大笑いした。
「ぶははははっ! 一理あるけどそうじゃないよ。人数が足りないんだよ」
「あ、四人じゃダメなんですか?」
「団体戦ならね。最低でも六人いないと参加できない。だから二人足りないんだ」
「だから僕たちは他所から助っ人を呼んで団体戦をカバー。もちろん個人戦にも出られるよう頑張っているよ」
「個人戦と団体戦、どう違うんですか?」とツナグが問うと「何も知らないんだな」とリコルが毒づいた。それに少し苛ついたがここは我慢のツナグ。
「団体戦は第一としてどこかの組織に所属していないといけない。学校とか民間のクラブとかだね。大会は基本的に同じ組織同士でおこなうから教育機関のチームと民間のクラブチームが混ざることはないよ。チームは最低六人必要で、対戦方式はシングルス二回ダブルス二回か、シングルス四回ダブルス一回。この辺は大会のルールによって異なるね」
部長は分かりやすく電子ボード上に書きながら説明していく。
「個人戦も同様に組織への所属が参加資格に含まれていて、教育機関と民間で分かれている。ここまでは団体戦と同じだけど、参加志望者は夏に向けて春と秋のシーズンごとに開かれる予選で一定以上の好成績を収めないといけないんだ」
「ちょっとややこしいですね」
「うん。でも個人戦の予選はなかなか面白いよ。全員が一堂に会する多人数同時参加型、いわゆるMMOでサバイバル方式だったり、障害物レース方式だったり、クイズ方式とかもあったね」
「その時まで何が来るか分からないし、苦手なのが来たら諦めるけどねえ。僕は」とため息をつくレイト。
「運営曰く総合力を測るものらしいからね。普段からちゃんと心技体を鍛えていないと個人戦にはついていけない。それが僕の意見かな」
「それって俺もエントリーできるんですよね?」
「もちろん。君はもう組織に所属しているからね。エントリー期限が切れる前にやっておくといいよ」
「分かりました!」
一歩ずつだが着実と進んでいることに実感を覚えるツナグ。
「三週間後には秋季大会の地区予選がおこなわれる。今回は助っ人二人だけで済むからすごく助かるね」
「部長。残り二人の部員は探さないんですか?」
「うーん。頑張って探したんだけど間に合わなかったね……。でもツナグ君が来てくれただけでも大助かりだよ」
「今から見つけても間に合わないですか?」
「できないことはないよ。すでに助っ人のメンバー込みで大会には登録しているけど、補欠メンバーとして加入させてオーダーを入れ替えれば。ツナグ君もそのやり方でエントリーさせるつもりだよ。それでも一週間前が限度だね」
「実質一週間か……。俺がなんとかしますよ!」
「本気かい?」
「ちょっと! ツナグ、本気?」
部長とリンから同時に突っ込みを受けたがツナグはいたって真剣。
「せっかくならフルメンバーで大会に出たいじゃないですか」
「それはそうだけど……」
「あのね、新人君。僕らも色々やってこれなのさ。声かけはもちろん校内のSNSで宣伝したりもしたけど。興味を持ってくれた子や体験入部希望の子もすぐにいなくなっちゃったし」部長の代わりにレイトがそう話した。
「それはどうして?」
ツナグの疑問ももっとも。体験入部希望の生徒まで急にいなくなるのは不可思議な話。
「それはだね……」と口ごもる部長に、
「言ってやれよ。本当のこと」と横からリコルが。
「……その、このデント部は他の部活動から恨みを買っているんだ。僕らのやることなすこと嫌がらせを受ける。根も葉もない噂を流されたり活動を妨害されたり」
「それは去年の事件が原因で?」
「それがターニングポイントかな。実はこのデント部は創部以来特に目立った成績を収めていない。でも活動にはかなりのコストがかかるから学校側から多くの援助を受けていたんだ。そのせいで他の部への援助が滞り不満が溢れた。止めを刺すように暴力事件まで起きて全ては水の泡に。学校側からも失望されてこの有様さ」
「一年の時に僕とリコルが入部してすぐだったねえ。前の部室はもっと広かったしデントのための設備が整っててちゃんとDIVEも用意されてたし」
今の部室を見る限りそれらの設備は全て売却あるいは返却されたのだろう。
「まあ、やるだけやってみますよ!」
「止めはしないけど無理はしないでくれ。君も一応大会メンバーなんだからね」
部長から許可をもらってすぐ実行に移すのがツナグ。生徒会室にいるアイサに大きな紙とペンをもらって校門へ。
「ツナグ、どうするつもりなの?」
「ん? とりあえず今できることって言ったらこれしかないだろ」
大きな紙に太字で『デント部、新入部員募集中!』。今の時代にそぐわないアナログなやり方だった。
「今計算してみたけどそのやり方だと成功率かなり低いわよ」
「うるせえな。黙って見とけ」
リンの分析は無視してツナグは部員募集の紙を掲げて校門付近をうろついた。狙いは帰宅する生徒だ。
積極的に声をかけてみるがやはり変な噂でも流されているのか反応はよろしくない。
「ほら、だから言ったじゃない」
「まだ始めたばかりだって」
そのあとも勧誘活動を続けたがこの日は誰一人として足を止めてくれなかった。
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