拍手 080 百七十七話 「地下都市探索」の辺り

 病院に集められたエルフ達は、見た事もない機械類に怯えていた。

「大丈夫よ、何も怖い事はないから」

 そう皆を説得するのは、エサレナだ。彼女の体は大分よくなっていて、今では日中の多くを起きて過ごしている。徐々に体を慣らしていこうという方針だそうだ。

 その一環として、健康診断の為に新しい里から連れてこられたエルフ達の案内役をしている。

 同種族の彼女の言葉なら、傷ついたエルフ達も信じてくれるだろうというのが、ティザーベル達の読みだ。そしてそれは当たったらしい。

 エサレナと同じ王都アデートから救い出されたエルフのうち、未だにベッドから起き上がれない者は半数以下だ。それを多いと取るか少ないと取るかは、人それぞれ。

 動ける者は、エサレナ同様案内役としてそれぞれの場所にいた。

「一番の検査を受け終わった人は、二階に移動してくださーい」

「あ、こっちは三番なので、先に二階の二番検査を受けてね」

「手元の検査表を見て、番号に判子が押されていない検査はまだ受けていないものですよー」

 アデートにいたエルフ達は、治療のついでに既に検査を終えている。一番心配だった性病感染はなかったらしく、影でティザーベルが胸をなで下ろしたのはまた別の話。


 この健康診断で、一番顕著に出てきたのは栄養失調だった。かなり偏った食生活を強いられていたのと、やはり日光不足が主な原因である。

「やっぱりか……」

「でも、このくらいなら栄養補助と運動の支援程度で何とかなるって」

「じゃあ、健康増進プログラムの方、よろしく」

「はいはーい」

 一番都市の機能を使う事なのに、何故か五番都市の支援型であるパスティカがやる気を見せている。

 支援型同士は、主たる支援型の許可があれば、ある程度都市の機能を使えるという話だった。

 この場合、許可を出すのは一番都市の支援型であるティーサで、許可を受ける側がパスティカだ。ティザーベルの知らないところで、ティーサから許可を得たらしい。

 これで新しい里のエルフ達が、健康に幸福に過ごせるといい。あとは、男女比の事くらいか。

 何せ救出したのが女性ばかりなのだ。聞けば、男性も捕まるには捕まるのだが、彼等はある街にまとめて送られるそうで、女性のように数も多くないという。

 いつかは、男性達も救出しなくては。エルフが捕まっている街の情報は入手しているので、しらみつぶしに回っていけばいつかは救出出来るだろう。

 とりあえず、今は健康診断を終えた彼女達を、里まで送らなくては。その辺りをティーサに頼んで、ティザーベルは私室へと戻っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る