第23話 強大な力を得た異種族に対する警戒感
戦闘型アンドロイドを相手に魔法で大暴れできたたリリスはひどくご満悦の表情を浮かべていた。いつもの鼻歌が自然と醸し出されている。
メインフレーム室にはラファエルへの戦果報告に戻っただけでそれ以後は近づいていない。
レティシアと同じ場所にいたくなかったのだ。
リリスがレティシアを目の敵にする原因は、彼女がまだ実験体の立場であった頃にまで遡る。
エルフ種との遺伝子合成であるリリスと、リリスにはまるで理解できない種族との遺伝子合成であるレティシア…この二人に対する研究員の態度はまるで違っていた。
彼らは表面上穏やかに振る舞っているものの、その本心ではエルフ種の彼女を動物か何かのように見なしていた節がある。少なくとも敏感なリリスの感性にはそう思えたのだ。
他方で人間種の容貌をしていたレティシアは端から見ていてそれとわかるほど実験体以上の扱いを受けていたといえる。
レティシアはそれをリリスの誤解だと言っていたが彼女は信じなかった。
ようするに自分が表面上穏やかな扱いを受けるのは、貴重な人工生命体であるということとエルフ種という物珍しさからに他ならない。
それゆえ成果として求められた魔法を遮二無二会得することによって少しでも心のこもった扱いを彼女は求めたのだ。
だが魔法を使えるようになった成果は上辺だけの賞賛とその仮面の下にある不気味さに他ならない。強大な力を得た異種族に対する警戒感なのだ。
『私はエルフとの合成という理由だけで差別されている。だけどレティシアは…』
リリスのレティシアに対する嫌悪は相当なまでに蓄積されていた。それは自分には与えられないものをレティシアには与えられていることへの嫉妬ともいえる。
リリスは通路にリズムカルな鼻歌を響かせながらあてどもなく彷徨っていた。
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